4. ここから始まる私の物語
私は、舞台になんて興味はない。
ただ、名前を貸さないと廃部になってしまうからという先生の頼みを仕方なく聞いてあげただけなのだ。
私、佐山乙葉は、江ノ島高等学校2年の17歳。
高一の時には部活には参加せず、バイトをするそれだけの日々。
高校の青春が大事だって大人は言うけど、高校生の私には分からなかった。
___青春ってほんとに大事なの?
青春をしている暇があるならバイトをしてお金を貯めて、老後に備えた方がいい。
そう私の中の私がそう言っている。
だって、老後には絶対お金が必要でしょ?
青春なんていう曖昧な言葉で、時間を浪費するより未来を見据えて貯蓄した方がずーっと理にかなっているもの。
そう私は思う。
___どう?捻くれているでしょ?
でも、そんな捻くれ考えなんて誰にも言わないよ。
周りと違う考え方を持っているとハブられるし、社会に出たら空気を読む?ってことが大事になってくるんだってバイトをしながらなんとなく感じているから。
だから、周りに合わせながら、周りの目に引っかからないように周りと違う歩みをする。
これが私のモットー。
そう生きてきたはずなのに、なんで私が演劇部の入らないといけないの?
「断るの苦手なんだよね」
そんな言葉をポツリと吐き捨て、私は無人の演劇部室の中に入る。
この学校の演劇部は、3年生秋の大会で引退をしてからもう部員として誰も残っていない。
正確にいうと同学年の幽霊部員が1人いるくらいだ。
埃っぽい部室の中をぐるりと見渡し、窓際の席に座る。
こういうやって無駄な時間を過ごすのが青春なのかな?
「今、私青春してるわー。うける」
私の言葉が部室内に寂しく響き渡る。
その沈黙に耐えかねた私は、部室から出て行こうと席を立つと、向こうの机に置いてあった本が1人でに落ちてきた。
正確には、A4サイズの紙に縦文字で書かれている台本だった。
私は、その本を元の場所に戻そうと手に取った。
しかし、私は何を思ったのかその本を気まぐれに読んでしまった。
それがこの私の物語の始まり。
本当の私の青春は始まりだった。