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2.そして、何かがなくなった

今日もなんとか1日を生き延びることに成功した。


今日も23:00に最寄駅に辿り着き、近くのスーパーで割引シールの付いている商品を手にする。

この割引シールが付いているというのが一番重要なことである。


財布に入っている少しばかりのお金と相談をしながら食料を見定めていく。

でも、この見定める時間が至福の時間と言ってもいいかもしれない。

なぜなら、見定めるということもできないこともあるからだ。

____そう、もやしさえ買えなくなったことが君にはあるかい?


2023年6月中旬。

僕、倉井燈夏は、あの大博打を見事に負けた。

この見事は、言葉的にはおかしいが、見事と付けないとメンタル的にやっていけないから許してほしい。


その博打の始末がとても大変だった。

当時の自分には目も当てられないような大赤字。

各所へのギャランティや劇場費などをありとあらゆる方法で支払い、手持ちはマイナスになってしまった。

こんな言葉があっているか分からないが、どうして今生きているのかも分からない。

でも、生き延びてしまった。


だから、生きるためにとにかく働いた。

舞台演出助手という、舞台のスケジュール管理や進行などをする中間管理職のようなポジションにつき、朝から深夜まで働いた。

それだけじゃ生きていけないから、バイトを深夜に入れて、生活をなんとかこなしていった。

この生活をしていくうちに、目がだんだん見えにくくなっていった。

舞台稽古というリハーサルの最中に急に片耳が聞こえなくなってしまって半年聞こえづらい中、生活と仕事をこなした。

愛想笑いをしすぎて、本当の笑顔を仕方がよく分からなくなった。

涙の出し方もよく分からなくなった。

自分の本心もよく分からなくなった。

そして、なんとか負債を払い終わった時には、なんで舞台をしているのか分からなくなった。


僕の中でずっと存在していた大切な何かをこの地獄のどこかに落としてきてしまったようだった。

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