1-8 リーディアの護衛騎士
澄んだ青空がどこまでも続くとある日。
護衛騎士と共に水の精霊神殿を訪れた私は、式典の間で儀式用の剣を持って立っていた。これは、貴族の子息の為に装飾され軽量化されたものだ。
今から精霊王の前で主従の契約を結ぶ儀式を行う。と言っても簡略化されたもので、私は正装姿で片膝を付いた騎士の右肩に剣先を当ててじっとしてるだけで良い。
神官様が口を開いた。
「汝、メイジー・フェアバンクスは、いついかなる時も主であるリーディア・カリスを守り、敬い、愛し、忠節を尽くすことを誓うか?」
「はい。命の限り主の盾となり、敬い、愛し、主を害する者には剣を以って戦い、決して退かないことを誓います」
私の護衛騎士に選ばれたのは、レオの妹だった。あれからものすごく頑張って副団長クラスまで実力を上げたらしい。
私は彼女、メイジーに初めて会った時を思い出していた。
あの日も騎士団の正装に身を包んだメイジーは、噂通りキラッキラしていた。
「初めまして、公爵令嬢様。私はカリス領私設騎士団副団長、メイジー・フェアバンクスと申します」
顔とスタイルが良いのはもちろん、少し憂いを帯びた表情もありつつ洗練された物腰が乙女のハートを鷲掴みにしそうだ。
水魔法の中でも氷系が得意だと言う彼女の瞳はアイスブルーで、髪の色はレオよりも白に近い銀髪をしている。
彼女が騎士を志した経緯を簡単に説明すると、幼い頃から、伯爵令嬢であるメイジーはドレスを着て社交界を謳歌するよりも、剣をもって家門に貢献する方が自分に合っていると思っていたそうだ。
そして養い親であるカリス領の祖父に頼み込んでレオと同じ剣の先生を付けて貰っていた。魔法学園でも騎士コースへ進み、数少ない女性騎士候補として修練に励んだ。
卒業後は王宮騎士団へと考えていたが、兄のレオからカリス領騎士団に誘われて入団し、その後私の話を聞き、自分の天職はこれしかないと決意して護衛騎士を目指してひた走ったらしい。
瞳を潤ませてそんな熱い思いを語られてしまうと、私もメイジーが守護するに相応しい主人になりたいと思った。
“シュヴァリエの誓い”が終わった後、引き続き“契り”も行われた。
メイジーが用意したのはアイスブルーの薔薇の花束と、瞳と同色の魔法石を嵌め込んだイヤーカフだ。パールのモチーフが揺れているのは、彼女の名前の由来となっているからだ。
それを、レオから贈られたイヤーカフの下に着けて貰った。
読んで下さってありがとうございます。
楽しんでいただけたらいいなぁ