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カリス公爵令嬢は幸せになりたい  作者: 成海さえ
第二部 魔法学園二年生(15〜16歳)
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II-10 プライベートビーチ

 お兄様が『海が見たい』と言ったので、夜に二人でビーチへ出た。護衛の三人もいたけれど、レオが


「俺たちは邸の入り口に待機してますね。何かあれば、狼煙を上げるなりして知らせて下さい」


 と言ってみんなで邸に引き返していた。気を遣ってくれたのね。


 お兄様と手を繋いで砂浜を歩く。夜の浜辺には松明が焚かれており、月や星空も含めて適度な明かりがあった。


「ディラン様‥‥せっかく休みを取って来たのに、なかなか休めないわね」

 心労が溜まって人間のこと嫌いになってないかしら? 少し心配だわ。

「うん、でも君と一緒に過ごせるならそれでいいよ」

 彼の言葉に隣を見上げたら、青い瞳が見つめていたので目を伏せる。


「えっと、年末年始はまた二人でのんびりしましょうね! それがいいわ」


 お兄様は立ち止まり、私を抱きしめた。


「リーディア‥‥僕の目をあまり見ないね? 何かあった?」


 私は彼の背中に腕をまわし、ぎゅっと力を入れた。


「何があったの? 話してごらん」


 優しく問いかけられ、顔を上げるとお兄様が心配そうに私を見ていたので、座って話すわと頷いた。

 頭を整理しながらガゼボに向かい、水の精霊王と出会ったこと、お兄様が転生すること、国が騒がしくなると言われたことまでを告げた。



「まずは、精霊王と言えどリーディアを泣かせたのは許せないな」

 お兄様の発言に驚いて彼の口を手で塞ぐ。

「しーっ」

 自分の唇に人差し指をくっ付けて注意すると、彼は少し笑って頷いた。


「自分の瞳がなぜこうなのかは、ずっと疑問に思ってたから、理由が分かってすっきりしたかな」


 意外と冷静なのね? かと言ってこの件にショックを受けて慌てたり絶望するお兄様も、あんまり想像できないわ。でも、軽く流した感じにしている彼の胸中は、とても複雑なはずだ。

 腕を広げられたので、その膝の上に横向きに座る。ウエストに腕がまわったので、身体を預けた。


「転生って言われても‥‥亡くなった後の事なんて、今から考えられないしなぁ。とりあえず毎日を生きるのと君を愛するのに精一杯だよ」


 あら、告白されたわ。顔を上げて目を閉じると、口付けされた。


「私も、ずっとお兄様の側にいるわ」

「うん、よろしくね。あと名前で呼んでね?」


 少し笑って二人で海を眺める。


「“この国が騒がしくなる”のは、海賊のことだと思う?」


 尋ねると、しばらくして答えがあった。


「今の時点では分からないな。海賊が悪さをする程度で精霊王から警告があるとは思えないから」

「ルイス様にもお伝えした方がいいかしら?」

「そうだね、お許しが出ているなら伝えよう」



 翌日、ルイス様とカミラ様に警告があった部分だけをお話しした。


「うん、分かったよ。十分注意しよう。パーティー当日は“影”にも同行して貰うから‥‥ディア姉様の前に顕現されたって事は、姉様に関わりがあるのかもしれない。他にも何かあれば、すぐに情報を共有しよう」


 隣のカミラ様も頷いている。とりあえずは気を配りながら前に進むしかないわね。

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