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カリス公爵令嬢は幸せになりたい  作者: 成海さえ
第二部 魔法学園二年生(15〜16歳)
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II-2 ソード大公

 本当は春休みに私もエストリアを訪問する予定だったけれど、結局見送ることになり、彼の国へはカミラ様とルイス様のお二人でご訪問された。

 私用に仕立てられたドレスは、4月の誕生日パーティーで着用している。


 この春で変化した事はまだあって、先王陛下が完全に国政から離脱すると言う意味で大公に任じられ、王都に隣接する領地へ転出された。

 ご本人も希望されての事だったので揉めたりはなかったのだけれど、急に仕事が減ったソード大公は、暇だからと言う理由で、この春の人事異動で当学園に用務員として赴任して来られた。


 放課後、私は麦わら帽子を被って花壇の手入れをしている男性の隣にしゃがむ。

「お祖父様、お疲れさまです」

 かしこまらなくて良いと言われているので、普通に話しかける。


「ああ、リーディア。もうすぐ終わるから、植え替えたこの子達に水をやってくれるかな?」

「はい」


 脇に空のジョウロが置いてあったので、水を張って土にかけていく。濡れた面から色が変わり、地面が潤っていくのを見るのは楽しい。


 放課後、時間を見つけてはお祖父様の所へ遊びに行った。カミラ様が一緒の時もあるけれど、今日は一人だ。明るくて、お茶目で、何となくルイス様に似ているので、ふとした時にお顔を見たくなる。

 これまでご多忙だった為あまりお会いできなかったぶん、学園在学中はたくさんお話ししてみたい。


 片付けを手伝い、手を洗って何度か通った用務員室にお邪魔する。


「そうだ、“影”が買って来てくれたスイーツがあったな‥‥何でも街で行列ができる人気店だとか」


 お茶の用意をしながら、お祖父様は魔法石で保冷されている戸棚を開ける。麦わら帽子の下の白髪混じりの金髪も品があってよくお似合いで、私は大好きだ。


「リーディア、お皿を出して貰えるかな? 一緒に食べようか」

 お手伝いしていると、ドアがノックされた。お祖父様の返事を待って入室したのは、お兄様だった。


「久しぶりだね、ディラン。いらっしゃい、さあ座って」

「失礼します」


 お兄様は私の隣に腰掛け、お疲れさまと微笑んだ。いつ見ても笑顔が眩しくて王子様みたいだわ。来るとは聞いてなかったけれど、ご一緒できるのは嬉しい。

 ルディは厩舎へ行っており、メイジーとレオは扉の向こうに控えているため、室内には居ない。お兄様の登場についてお祖父様から説明が入った。


「メイジーに伝言を頼んでたんだよ。ディランは生真面目が服を着てるような、あのメレディスの孫でもあるからねぇ‥‥たまには息抜きしなさいってね」


 メレディスとは、カリス辺境伯のお祖父様のお名前だ。昔から仲良しだったらしい。

 ソード大公はお茶を配り終えて席につき、私達にお菓子も勧めて下さった。


「君達はまだ学生なんだから、もっとわんぱくでも良いんだよ? ルイスぐらいが丁度いいかな‥‥多少の事は、大公権限で私が何とかしてあげるから。君達は私の孫でもあるんだし」


 ルイス様が丁度いいと言われて、笑ってしまう。


「でもお祖父様、私とディラン様、それとカミラ様もルイス殿下のように自由な感じになってしまったら、周りが困ってしまいそうだわ」


 孫の話に笑顔で耳を傾けているソード大公が答える。


「そう言う時はね、魔法の言葉があるんだよ‥‥“だってソード大公がいいって言ってたもん”」


 ルイス殿下の真似だろうか、いやその言い訳が似合うのは王太子殿下しか居ないけれども。


「そうしたら今度は、お祖父様が大変な事になってしまうわ」


 私とお兄様が思わず笑ったのを見て、お祖父様は満足したようにお茶を飲んだ。


 帰り際に、私とお兄様でカップやお皿を片付けようとしたのだけれど、『そのままでいいよ。片付けは“影”にやって貰うから』と言われてしまった。でも、“影”の使い方はそれで合っているのだろうか?

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