II-1 それから
季節が進み、私は王立魔法学園の二年生になった。
一年のクラス分けは親の爵位別になっていたけれど、二年以降は選択コース別になるため、神官コースを選んだ私とカミラ様は、必須科目として、精霊魔法に加えて神学、福祉、治癒魔法とそれに付随した医学等を学習する。
そして選択科目で去年の世界史等に加えて剣術の実技も教わることとなった。
座学は基本的に学年別に行われるけれど、実技は能力別となっており、例えば2年生でも魔法が苦手でレベルが低い生徒は初級クラスのままだ。
上のクラスに移籍したい場合は試験を受けて、その能力に満たしていると学園側に認められる必要がある。
4月の青空が広がる日、剣術・初級クラスの授業のため、お揃いの鎖帷子に着替えた私とカミラ様を追うように、背後から声がした。
「お姉様ー! おはようございます!」
駆けてくるのは新入生の王太子殿下だ。もちろん今は男子生徒として学園に通っている。
まだ一年生なので座学は一緒に受けられないけれど、実技は絶対同じクラスにするから! と宣言を受けている。
「殿下、おはようございます」
私は腰を落としてお辞儀をする。隣でポニーテールにしたカミラ様も、軽くお辞儀をして応えた。
「いらっしゃい、ルイス」
「お姉様お二人の鍛錬姿を見られるなんて貴重だよね。ほら、ギャラリーもいっぱいだよ」
騎士棟に設けられた鍛錬場には、講義のない生徒が大勢集まっていた。学園の警備兵が授業の邪魔にならないように、交通整理をしている。
ウォーミングアップが終わると、武器別に訓練が始まる。私達はサポートにメイジーとルディが付いているので、カミラ様、ルイス様と三人で短剣の扱い方を教わっていた。
「王女殿下、先日お教えした通りに短剣を構えていただけますか?」
一番の初心者はカミラ様なので、ルディが付きっきりで指導している。
「ディア姉様は、私と一緒に素振りしよう?」
ルイス様がニコニコしながら私の隣に立って顔を覗き込む。当然ながらこの方はお兄様と同じく幼少時から武器を扱う訓練を受けているので、初級クラスに居る必要がないのだけれど、主張を変える気はないらしい。
メイジーにかけ声をお願いして、私達は素振りを始めた。彼女に憧れて騎士コースを選択した女子生徒が熱い視線を送っている。
「あっ‥‥!」
屋根のない鍛錬場に風が吹いて、カミラ様の頭に結んでいたリボンが飛んでいった。見学していた男子生徒が競うように群がり、最終的に一人の警備兵が取り上げてこちらへ近付いた。
「王女殿下、どうぞ」
跪いてカミラ様に向けて手を伸ばした兵士との間に、ルディがさりげなく入る。
「ありがとうございます」
曇りのない笑顔でそれを受け取った。
「ルディ、私が結ぶから、貸して」
リボンはルイス様に渡り、無事にカミラ様の頭へ戻った。ちなみにルイス様も髪が長いので、後ろで一つに結んでいる。
お疲れさまです、成海さえです。毎日暑くて睡眠不足ぎみですが、皆様お元気ですか?
ブックマークして下さっている方がいたので、前作を第一部、今作を第二部として続きを書いてみました。
全37話の予定です。どうぞよろしくお願いします。
読者様が楽しい時間を過ごせますように!




