1-7 ディランの護衛騎士3
レオの希望で、私の肖像画を2枚描く事になった。
なぜ2枚なのかと言うと、一枚はレオの携帯用で、もう一枚は渡したい知人が居るのだとか。
「いやぁ、今年、生きのいい新人が入団したんですよ。抜き身の剣みたいなね。俺の予想ではソイツが2年後に姫の護衛騎士に抜擢されるんじゃないかって思ってるんです」
レオはいつものごとく私の前に跪いて事情を説明する。
「なので、アイツに姫の肖像画を渡したら、絶対張り切ると思うんですよ。外見が無駄にキラッキラしてる奴だから、姫ちゃんも連れ回してて楽しいですよ〜‥‥あ、身元はしっかりしてます。俺の血縁ですから」
レオは私の手をぎゅっと握った。ちなみに彼は伯爵令息である。
「だから、姫ちゃんの肖像画を持つ許可を下さいませんか? アイツは俺が責任持って必ず副団長クラスにまで育てますので。俺も、俺のレディの護衛はそれなりに信頼できる奴に頼みたいんです」
私のすぐ横に座っているお兄様を仰いだら微笑んで頷かれたので、私も了承する事にした。
肖像画を描いた画家と嬉しそうなレオが一緒に退出した後、お兄様とお茶をしながらお話する。
お兄様は魔法の訓練に出かけた際に、ついでにその新人騎士の鍛錬の様子も見学したらしい。
「うん、本当にキラッキラした騎士だったよ」
騎士になるにはふた通りあり、その新人さんの場合は魔法学園の騎士コースを卒業したエリートなので、卒業時に試験を受けて合格すれば騎士の称号が与えられる。
けれど、その後二年で副団長クラスまで実力をつけるには並大抵の努力では足りないはずだ。
「ずるいわ、お兄様だけお会いするなんて。私も見てみたいです」
お兄様は10歳を迎えて外出する機会が増え、魔法の訓練の他にも度々辺境伯のお祖父様に会いに行ったりしている。宮廷でのお仕事や領地運営について教えて頂いたそうだ。
お兄様の世界が広がって行くのを実感する。いつまでも二人きりでこの邸で過ごす訳にもいかないのね‥‥
寂しくなって紅茶のカップに手を添えて俯くと、彼の手がそっと私に触れた。
「リーディ、どうしたの?」
青いグラデーションの瞳が心配そうに揺れている。
「お兄様と一緒に居られる時間が少なくなって寂しいなって‥‥あ、でも私もやりたい事が沢山あるから大丈夫よ」
「ごめんね、リーディ‥‥僕は父上のお仕事を手伝う事が直近の目標なんだ。その為にも沢山勉強して、色んな知識を身につけないと」
おいで、と両手を広げられたので、大人しくお兄様の膝の上に座る。
「でもね、最終的な目標は、君と早めに結婚して僕達の邸で一緒に暮らす事なんだよ。これからその基盤を作りたいんだ。分かってくれるかな?」
お兄様を困らせたくないので、私は頷いた。
「ありがとう。大好きだよ、僕のリーディ」
お兄様はぎゅっと私を抱きしめた。