3-52 休暇3
ビスチェで胸を締め付けない生活は、とても快適だった。お祖母様も胸が豊かなので、周りの人達も誰も気にしていない。
護衛騎士の皆とも話した結果、ルディはここに残り、レオとメイジーは数日間祖父の暮らす男爵家へ里帰りをする事が決まった。
レオもメイジーもフェアバンクス伯爵も、お手紙をまめに書く方ではないので、お祖父様も喜ばれるのではと思う。
「それじゃ、爺ちゃんの邸に行って来ます。手広く商売してるらしいので、姫の好きそうなものがあったらお土産に持って帰りますね」
見送りに出ていた私に、馬上からレオが告げる。
「ええ、楽しみにしてるわね。行ってらっしゃい」
並んで馬に乗っているメイジーも口を開く。
「姫、何かあれば知らせて下さい。すぐに戻ります」
「こちらは多分大丈夫よ。レオとゆっくりして来てね、メイジー」
少し不満顔だったメイジーも、観念したのかレオと馬を走らせた。
ルディは訓練場へ行って以前の職場の仲間と再会を喜び、使者様はお祖母様と温室で過ごしている。
“綾”の世界で知った、雪で作る“かまくら”を経験してみたいと言ったら、お兄様が魔法ですぐにドーム型のものを作ってくれた。
「君は花が好きだから、こんな感じかな」
お兄様が手をかざすと、氷の表面に粉雪でお花の模様が浮かんだ。さすが、水の王子様だわ。
「素敵!」
手を叩いて喜ぶ私を見て、お兄様も嬉しそうに笑った。
使用人に椅子やテーブルを運んで貰った後、アルマがお茶の準備もしてくれた。外套が脱げる程ではないけれど、なかなか快適だった。
「二人でこんなにゆっくり出来るのって、久しぶりね」
「そうだね」
お兄様の時間を独り占めできるなんて、とっても贅沢だわ。
「カミラ様達も、王宮でのんびり出来てるかしら?」
「王女殿下はさすがに休んでると思うけど、王太子殿下はお見合いでもしてるんじゃないかな」
いよいよかぁ‥‥素敵なご令嬢と出会えているといいなぁ。
「あっ、そう言えば、エストリアではカミラ様と皇太子殿下は、とってもいい雰囲気だったの」
「‥‥‥‥うん」
お兄様は笑っている。これは、今何を考えているのか私でも分かるわ。
「“本当に恋物語が好きだな”って呆れてるのね?」
「いや、僕の奥さんは可愛いなって癒されてるよ」
おいでと言われたので、いつものように彼の膝の上に座った。昼間から二人きりなのが嬉しくて、お兄様に体を預けた。
「また春になったら、エストリアに行ってもいい?」
「皇帝陛下にドレスをプレゼントして頂いたんだよね、レオから聞いてるよ‥‥今度は僕も一緒に行きたいけど、休暇が取れるかなぁ」
「夏は一週間ぐらいお休みがあるのよね?」
「うん、夏は交代で休むから休暇を取りやすいかな」
私も今度エストリアに行くなら、お兄様と一緒がいいけれど‥‥王宮勤めって大変なのね。




