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カリス公爵令嬢は幸せになりたい  作者: 成海さえ
第一部 第三章 魔法学園一年生(14〜15歳)
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3-48 パーティー4

『ほら、言っただろ? 兵士が少なくなってるって』

『そうだな。パーティーが早めにお開きになったから何かあったと思っていたが、チャンスだな?』

 声が扉の前で止まり、ノックの音に変わる。


「何か御用でしょうか?」

 メイジーが扉を開けずに尋ねると、返事があった。


『パーティーに出席していた者です。ご挨拶ができなかったので、一言申し上げたいと思い参りました』

 その後に下品な笑い声が続く。酔っているのだろう。ルイーズ様は立ち上がり、扉の前で足を止める。


「私共は問題を起こしたくありません。どうか、このまま立ち去るようお願い申し上げる」


『そんな連れない事を言わずに、開けて下さいよ』

 ドンドン複数人で扉を叩かれる。止める気配は全くない。ルイーズ様が溜息をつき、隣のメイジーを見た。


「許す。手早く終わらせるように」

「かしこまりました」


 メイジーは開錠して扉を開いた。男達の赤い顔が好色に歪む。


「おっ、女3人か。丁度いいな。神官は殴って転がしとけば大人しくなるだろ」

 男性3人が確認できたタイミングで、メイジーがするりと廊下に出て扉を閉めた。


『お引き取り下さい』

『何だよ、中に入れろよ。痛い思いしたいのか!』

『‥‥仕方ないな。覚えておけ、これは正当防衛だ』


 そして男性の呻き声と何かが倒れるような音を数回繰り返しただけで廊下はすぐに静かになった。


「お待たせ致しました」

 服の乱れを少し整えながらメイジーが戻ってくる。

「お疲れ。後はここの兵士に任せるといいよ」


 殿下と私は再びソファーに座り、時を待つ。

 その間に、カミラ様が誘拐された際の状況の説明もあった。部屋に戻って入浴の準備のためルイーズ様が隣の浴室に移ったその間に悲鳴が聞こえ、戻った時にはもう王女殿下の姿はなかったそうだ。


 説明の後に呟きがあった。

「勝算があると思ったから皇太子殿下の話に乗ったけど‥‥姉様にかすり傷一つつけてみろ、破談にしてやる」

 いつもの可愛らしい雰囲気では全くなくなっている。でも私も同じ気持ちだった。


「どこまで連れ去られたのでしょうか?」

「あの乗り物だと、そんなに遠くはないかな? この周辺にも貴族の邸が集中してるらしいから、その中のどれかじゃない?」


 落ち着かない私は窓の外を見た。雪が降り始めている。早く戻って来ますように‥‥!


「そう言えば、ディア姉様が参加した夏の合宿で、大量の魔物に襲われたでしょ?‥‥あれって故意に呼び出されたものだったんだ。当時、魔物が発生した場所の地面が円形状に光っていたのを目撃した者がいる。後日改めて調査した時には何も発見できなかったけれど」


「そうだったのですか、犯人は?」


「犯人も目的も分からずじまい。当時からカミラ姉様とルシファー殿の婚約が持ち上がっていたから、その関係で狙われた可能性もある。9月に皇太子殿下が来訪された際にも、その件に関して尋ねたけど、成果はなかった」


 ルイーズ様はお茶を一口飲んで溜息をついた。

「それでさ、皇太子殿下と話したり行動を共にしたりも何回かあったんだけど‥‥あの方は頭も切れるし、包容力がものすごくあるなって‥‥カミラ姉様のちょっと面倒な性格を“可愛い”と言ってくれる人ってなかなか居ないよねぇ」


「ルシファー様のお姿も、カミラ様の好みど真ん中ですわ」

「そうなんだよねぇ‥‥昆虫が乗り物って、普通のレディだったら悲鳴ものだけど、姉様なら興味持ちそうだし」


「皇帝陛下もこの婚約に前向きみたいですし、嫁姑の関係もうまく行きそうですわね!」

「うん、ただ、アルカナと違って内政にまだ不安があるって言うのがなぁ‥‥」

「そうですね、その点はとても心配です。早く解決してくれると良いのですが」


 そうして真夜中ごろ、馬車で戻ったルシファー様に抱えられて意識を失ったカミラ様が宮殿内に運び込まれた。


いつも読んで下さってありがとうございます。


よっしゃカミラ殿下も戻ったことだし、月曜日頑張ろう! おー!

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