3-47 パーティー3
室内には、既にベルの姿があった。カーペットの上に焼け焦げた円形の模様が刻まれており、指で触れて確かめている。
「なるほど、復元してみたところ古代文字で王女殿下のお名前が記されておりますね。トラップ式なので、王女殿下が触れると発動するものでした。既に使用済みですから、殿下は誘拐された後かと」
「追えますか?」
ルシファー様の言葉に、立ち上がって腰を折る。
「もちろんでございます、皇太子殿下。ご案内致しましょう。屋上まで御足労いただけますか?」
移動中にルシファー様から説明がある。あの模様は悪魔の力を使った簡易転送サークルであること、ベルは痕跡を辿ることが出来るので、先発隊は空から追い、後発隊は迎えの馬車を伴い陸からその後に続くこと。
先発隊にはケイ・ロス、レオとルディが同行し、後発隊にはジーン様が残り、私とルイーズ様とメイジーは留守番となった。
屋上には開けた場所があり、ベルが用意したと思われる乗り物が人数分、規則正しく並んでいた。
「わぁ、トンボですね!」
ルディは鞍の付いた、人間よりも大きなトンボに駆け寄る。
「俺、子供の頃乗ってみたかったんだよなぁ」
「おや、ルディさんでしたか?‥‥あなた見所がありますね。これは実に便利な乗り物なのですよ」
ベルが頷きながら先頭のトンボに手をかける。既に鞍に跨っているルディを見て、レオが呆れたように呟いた。
「順応性ありすぎだろ‥‥」
「急ぎましょう」
ルシファー様も慣れた様子で乗り込んだ。
「お待ち下さい」
見送りに出ていたルイーズ様が皇太子殿下に声をかける。
「我が国の大切な王女様をよろしくお願い致します」
「ええ、必ず無事にお連れします」
「では参りましょう」
最初にベルがふわりと飛び立ち、続いて他の個体も規則正しく並びながら遥か先の一点を目指して暗闇に消えていった。
使用人の調査は始まっているようだったけれど、パーティーの招待客は警備兵から不審な動きはなかったと報告があったため、今夜のところは帰宅を許可されたらしい。宮殿内がザワザワしていた。
「姉様、ここは寒いので戻りましょうか」
ルイーズ様にそっと手を取られ、階段を降りる。大丈夫かしら‥‥心配でため息ばかり出る。
「今は動かず、この離宮で待ちましょう? エストリアの方達に任せた方がいいわ」
「そうね‥‥」
手を繋いだまま廊下を歩く。
「姉様、そんなに不安だったら、私がぎゅーっとハグするよ? いつでも言って!」
今はディランも居ないしね! といつもの調子で言われ、笑顔を作った。
「ありがとう、ルイーズ様。気持ちだけもらっておきますね」
「いや姉様、私は結構本気だよ? こんなチャンス滅多にないからね」
「ルイーズ様、それくらいで止めて頂けますか? 私が若に叱られてしまいます」
「メイジーは真面目だなぁ」
そんな会話をしながらとりあえず自室に戻り、メイジーが淹れてくれたお茶をルイーズ様といただいていると、ふいに廊下から複数の声が聞こえた。




