3-43 冬休み4
翌朝、食事を済ませて侍女の案内で応接間に行くと、既に商人達が生地や装飾品を広げて待っており、ソファーに座った皇帝陛下がデザイン帳をパラパラめくっていた。
「来たか。座れ」
慌てて挨拶をしてカミラ様が陛下の向かいに座り、私は後ろに控えようとしたのだけれど、私もカミラ様の隣に腰掛けるよう指示を受けた。
「勘違いしているようだが、私はカミラ姫とリーディア姫二人を賓客として迎えている。覚えておくように」
え、あの陛下呼び方が‥‥と戸惑っている間に、数あるデザイン画をかなりの速さで選別していた陛下が数枚を侍従に渡し、侍従が私達の前にそれを広げる。
「その中から選ぶといい」
陛下のお言葉に、承知致しましたと答えていると、後ろからルイーズ様の声がした。
「恐れながら陛下、私もドレス選びに加わっても宜しいでしょうか?」
大丈夫かしらと様子を窺うと、気分を害されるでも無く陛下の許可がおりた。
デザインの次は生地選びで、最高級のものをご用意しましたと商人が広げたのは春物の明るい色の生地だった。
「また二人で遊びに来るといい。その時はこのドレスを着てみせてくれ」
では執務があるから、と陛下は退席され、代わりにルシファー様が加わって皆で生地や装飾品を楽しく選んだ。
「ちなみに、皇太子殿下はお好きな色や宝石はございますか?」
生地を選別しながらルイーズ様が尋ねる。
「そうだね、金とペリドットかな」
隣のカミラ様が赤くなるのを見て、ルシファー様は瞳を細めた。
「でも、カミラは何色でも似合うから、気にせず好きなものを身につけて貰いたいな」
えっ、お名前を敬称なしとは‥‥もうそのようなご関係なのですか、カミラ様?
と言う視線を送ると、詳しくは聞かないでと言うお顔だったので、詮索するのはやめた。
ルイーズ様も思うところがあったようで、何度か瞬きした後、笑顔で私に話しかけた。
「‥‥では、カミラ様は皇太子殿下にお任せして、ディア姉様は私と選びましょう♪」
ええ、と答えながら、大丈夫かしらとたまにお二人の様子をうかがっていたけれど、とても仲の良い感じになっていたので安心した。
「カミラ様に加えて、陛下はなぜ私にも良くして下さるのかしら?」
パーティーの準備の為に自室に戻り呟くと、近くに控えていたルディが口を開いた。
「そう言えば‥‥辺境伯領に居た時に噂を聞いたんですけど、夫人のエリアナ様とこちらの陛下はお手紙のやり取りをしていらっしゃるとか」
「えっ、お祖母様と陛下が?」
初耳だわ。昔から仲良しなのかしら。今度機会があれば聞いてみたい。




