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カリス公爵令嬢は幸せになりたい  作者: 成海さえ
第一部 第三章 魔法学園一年生(14〜15歳)
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3-36 引越し4

 その後、私とお兄様、メイジーとレオに加えて同行を希望された使者様も一緒に街へ買い物に出かけた。

 昔から付き合いの良いレオが私と一緒にはしゃいでくれて楽しくお花を選ぶ事ができた。


 気になったのは青系のお花が多かったけれど、店員さんの勧めで他の色のものや、グランドカバーと呼ばれる常緑植物を間に植えると見栄えも良くなるそうなので、それも注文した。


 次に貴族も利用するスイーツ店の個室で休憩を取った。このお店のスイーツは絶品で、晩秋の今だとアップルやマロン系の新商品が並んでいる。


 その季節のスイーツの盛り合わせが運ばれてフォークを持った時、向かいに座っている使者様と目が合った。

 この方はいつも飲み物しか召し上がらない。食事を取る必要がないらしく、加えて睡眠も取らなくていいそうで、天気の良い夜は屋根に登って星空を眺めていらっしゃるそう。

 ちなみにお兄様も飲み物だけだ。


 自分だけスイーツを注文するのは申し訳ないので私も同じにしようと思ったのだけれど、せっかくこのお店に入ったのだからと皆に説得されて今に至る。


「使者様、この後どこか行きたい場所や見たいもの等はございますか?」


 尋ねると、ハーブティーのティーカップに手をかけていた使者様は柔らかく微笑む。


「わたくしの乙女は優しくていらっしゃる。ですが、お気遣いは無用です。わたくしが行きたい場所は乙女の側、見たいものは乙女なのですよ」


 んっ?‥‥取り分けていたマロンシャンティを落としそうになった。


「いやぁ徹底なさってますね、さすがでございます使者様。俺も共感しまくりです」


「僕も、リーディアと過ごす時間が唯一の癒しだからなぁ」


 レオとお兄様が同意を示し、黙って控えていたメイジーも深く頷いていた。


 私も!‥‥私もみんなが大好き!


 無意識のうちに花壇を青系の花で埋め尽くそうとした位、私は青を持った人々に守られ、愛されて生きて来た。それを実感する。

 瞬きを我慢していただけのつもりだったのに、隣のお兄様がそっと私の目元にハンカチを当てたので、涙が出ていたのねと気付いた。


「ありがとう、お兄様‥‥使者様も、私の側で良かったら、いつまでも居てください」


「ええ、わたくしの乙女は話の分かる方ですね」

「まあ、俺のレディですからね」

「レオ、私のレディだ」

「僕の妻でもあるよ」

 いつものやり取りに笑ってしまう。



 その場はすぐに泣き止んだけれど、夜になるとまた泣けて来て、お兄様に抱きしめて貰った。夢に関する不安もなく、こんなに穏やかに過ごせたのは何年ぶりだろう?


「お兄様、私、今すごく幸せです」


 そう繰り返すたびに、そうだねと言って優しく背中を撫でてくれる。

 それがまた嬉しくて、いっぱい泣いた。


「ごめんなさい。涙が止まらなくて」


「うん、いいよ。今まで我慢してたんだから、気が済むまで泣いていいよ。よく頑張ったね」


 抱きしめながら、目元にキスしてくれる。

 私はお兄様に寄り添われながら涙を出し尽くし、そしてその腕の中で朝までぐっすり眠った。


 眠っているうちに彼が目元を冷やしていてくれたようで、翌日のまぶたはあまり腫れていなかった。


今日もお疲れさまです。

リーディアは『私、幸せ』と言ってしまいましたが、作者の都合により、あと18話ぐらい続きます。

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