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カリス公爵令嬢は幸せになりたい  作者: 成海さえ
第一部 第三章 魔法学園一年生(14〜15歳)
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3-30 試練2

「ようこそ夢とうつつの境界へ!精霊王の子と乙女よ!試練を踏破してみせよ!」



 真っ白な砂浜がどこまでも続き、透明度の高い青い海が波を寄せる。いきなりの場面転換に、声が出ない。


「リーディア」


 砂浜に、お兄様が立っていた。膝をついている私に手を差し伸べる。その手を取り、立ち上がった。

 周りを見渡しても海と砂浜と青い空だけで、他には何もない世界だった。

 手を繋いだままのお兄様を振り返ると、その背後に、急に人影が現れた。


「こんにちは」


 神官姿の男性が話しかける。

 青く長い髪に瞳は金色だ。お兄様と私は片膝をついて彼にお辞儀をする。


「初めまして、カリス公爵家子息のディラン・カリス及び妻のリーディアでございます。精霊王の試練を受けに参じました」


「ええ、よく存じております」

 男性はにこりと笑った。


「わたくしは水の精霊王の使者でございます。さっそくですが、精霊力の程を拝見したいので、霊獣と戦っていただきましょうか」


 どこまでも続く砂浜に、突然大きな黒いドラゴンが現れた。魔法陣は浮かび上がっていない。

 ゲームの画面で見るのとは違い、実際に対峙するドラゴンは命の危険を覚える程の威圧感があり、体がすくみそうになる。


「承知いたしました」


 お兄様は私の手を引いて、共に立ち上がる。目が合った。その宝石のような瞳を見つめて頷く。

 練習通り、すぐに防御魔法を張った。

 それを合図にお兄様はドラゴンへ向き合い、魔道具へ手をかざす。


「魔力解放」


 魔法石が輝いて発動し、次いで四つの光がドラゴンへ飛んだ。攻撃魔法はどれも通じるようだ。

 それを確認してから、私が状態異常の魔法を重ね、同時にお兄様が水の攻撃魔法を開始する。



 まずは翼から。

 飛翔系の敵は翼や羽を破壊して動きを封じたい。魔道具で力を増した水の刃が次々とドラゴンを襲う。反撃の炎や突風は、私の防御魔法で受け流す。

 ドラゴンが傷つき暴れるたびに地響きが起こった。


「リーディア」


 敵から目を離さずお兄様が足元を指差す。風魔法で少し体を浮かせていた。私もそれに倣う。

 彼にはまだまだ余裕がありそうだ。

 頼もしい人が側にいるから、怖かったけれど私も何とか冷静でいられる。



 戦いは夢に見たものとほぼ同じだった。ドラゴンは強攻撃の前に咆哮をするので、その都度魔法で動きを止めれば有利に戦えた。

 そして、翼や手足にダメージを蓄積して、いよいよとどめと言う時に、世界がまた揺れた。

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