3-28 神託3
翌日、朝のホームルームが終わると、カミラ様と王太子殿下に騎士棟へ誘われた。
伯爵位以上の貴族には護衛騎士の同伴が許されており、学園内には騎士専用の建物とそれに併設して厩舎や訓練場なども完備されている。
二年生になって騎士コースを選択すると、この訓練場を利用する機会も増える。
人気のない廊下を進み、会議室の扉を開けると、円卓には既に何人か着席していた。
「おー来た来た。とりあえず昼まで貸し切りにしてるから、適当に座って。あ、リーディア嬢は旦那の隣な」
炎の王子アレン様が手招きする。その横にはお兄様が座っていた。なぜかエストリアの皇太子殿下の姿もあり、慌てて挨拶をする。
「おはよう、私も参加させて貰うよ。何か力になれるかもしれないから」
私の隣にカミラ様、その横にツインテールにしたルイーズ様が座る。土の王子シリル様の姿はなかった。それぞれの護衛騎士が後ろに控えている。
アレン様の合図で、騎士のケイ・ロスが資料を配った。表紙には“精霊王の試練に関する傾向と対策”と書かれていた。
「これは、シリルが徹夜で仕上げたものだ。奴は今ペンタクルス領に戻って外国の文献を調べている。蔵書数はあいつの所が一番多いからな‥‥で、これは国内に伝わる神話等から今現在分かっている情報を纏めたものになる。時間が無いから、出来るところから始めよう」
隣のお兄様を窺うと、笑顔で頷いた。ルイス殿下の声が続く。
「女装した私がディア姉様の代わりになれるなら、喜んで参戦するのに!‥‥大丈夫、ディア姉様一人に負担を押し付けないよ。時間が許す限り協力するから、一緒に頑張ろう」
カミラ様もこちらを見て頷いている。不安だった心が温かくなり、涙で目の前が滲んだ。こんな頼もしい事があるだろうか。
資料の中身は、試練に関する主な内容が項目別に整理されていた。
「ちなみに、ディランは試練の内容はどんなものだと考えていた?」
アレン様の問いに、落ち着いた声でお兄様が答える。
「精霊魔法の査定と評価をされる可能性を考えていたよ。例えば、魔物や霊獣と戦うように命じられるとか」
「それはあるかもな。では、そこから始めるか。戦闘については後ろの騎士達が詳しいだろう」
ルシファー様が手を挙げる。
「対魔なら、我が国にアーティファクトと呼ばれるものが幾つかあるよ。あまり多くは貸せないが、一つぐらいなら何とかなるかな」
ルイス様が続ける。
「お願いします。私も陛下に各家門が所持している魔道具を貸与して貰えるよう交渉してみるよ。場合によっては緊急勅令も視野に入れてね」
それから毎日、早朝から特訓が始まった。
神話等に記載された試練は魔物や神獣と戦うものが主で、次に謎解き、後は自己犠牲を伴うものもあったので、それぞれ対策を考えて頭に詰め込んだ。
戦闘に関しては、実際に騎士達を相手に、お兄様と二人で連携を取る基本的な戦い方を何度も練習した。
今日もお疲れさまです。
いいねを下さった方、ブクマや⭐︎をポチって下さった方、読んで下さっている読者様もありがとうございます。励みになっております!




