3-27 神託2
私はお兄様に同意を得たうえでお父様に“綾”と乙女ゲームの話をした。そして、夢の内容と現実は違っていること、ゲームのハッピーエンドは、攻略した各属性の王子と共にドラゴンを退治した後に迎えられることを伝えた。
私の隣にはお兄様が座っており、後ろにはレオとメイジーが控えている。
「‥‥なるほど。予知夢の類だろうな。主人公とされる平民の少女が全く活躍していない所を見ると、リーディアがその役割を代わりに担っているのかもしれない」
「では、神託の通り試練は二人で受けるべきなのでしょうか?」
お兄様の問いに、お父様は頷いて答える。
「ああ、そうだろう。嫌だと言っても周りが許さないだろうしな」
重い空気が流れ、お父様の声が続く。
「先程の神殿での事象は、既に外部にも伝わっているだろう。精霊王の直系の若者で能力が高いと言えば、ディランと王太子殿下だが‥‥まあ今回の件で、ディランとリーディアにほぼ確定だ。私も自分の子供を守りたい気持ちはあるが、精霊王の御言葉を覚えているか?」
その問いに、お兄様が答えた。
「“精霊の力は、自国を繁栄させ守る為に使うこと”ですか?」
「そうだ。この試練は“自国を守る為に使う”に相当すると考えられる。よって、選択肢はひとつ。“試練を踏破する”一択だ」
お父様は息を吐いた。何も言わない私達に話しかける。
「希望があるとすれば、夢の内容が試練を乗り越えたところまで続いている事、あとは我らが精霊王を信じよう‥‥私も信頼できる友人に相談してみるよ」
そして最後に付け加えた。
「リーディアの見た夢がこの試練をもって終了しているので、夢の件は国王陛下や神殿には報告しない。いいね?」
「もし知られたら、予知夢を見る能力があり且つ精霊王の試練に挑んだ姫が王家や神殿に奪われちゃうかもしれないからですね! 了解です」
後ろからレオの声がした。
「承知致しました」
メイジーも従う。
方針は決まったけれど、試練を思うと不安でいっぱいだった。
合宿の件もあるし、本当にドラゴンを倒すだけで終わるのだろうか? それとも、全く違う何かが待っているのだろうか?
「リーディア、大丈夫?」
夜、緊張から手が冷たくなっているのに気付いたお兄様が心配して顔を覗き込む。
全然平気!と言ってあげたい所だけれど、夫には正直な気持ちを伝えたい。
「ごめんなさい、少し不安で。予定よりかなり早いし、私が見た夢と違う部分もあるから」
「うん」
お兄様は私を抱き寄せて背中を優しく撫でる。
「何があっても僕が守るから、大丈夫だよ‥‥それに、父上には精霊王の試練を受ける代わりに、それが終わったら新居に引っ越せるよう話をつけたから、それを励みに頑張ろう」
いつの間に。お兄様らしくてちょっと笑ってしまった。
「お兄様、今夜は一緒に居てくれる?」
お願いしたら、いいよと頷いてくれた。
小さい頃のように、ベッドに並んで寝転ぶ。
手を繋いで目を閉じると、お兄様の温もりが伝わって安心出来た。




