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カリス公爵令嬢は幸せになりたい  作者: 成海さえ
第一部 第三章 魔法学園一年生(14〜15歳)
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3-23 皇太子殿下1

 秋になり、エストリアの皇太子がご来訪された。

 この学園にも興味を示されているらしく、1ヶ月の滞在中に何度か見学に訪れる予定となっている。

 カミラ様が婚約者候補に挙がっている旨も公表され、国民は皇太子殿下を歓迎した。


「えー、本日はエストリア帝国の皇太子殿下も一日この学園に滞在予定となっています。皆、失礼のないようにして下さい」


 朝のホームルームに教師の声が響く。

 教室の後ろに特別な席が設けられ、皇太子殿下がニコニコしながら座っていた。

 肖像画通りの色香漂う20歳の美しい方だった。私の隣のカミラ様が緊張しているのが分かる。この後の校舎の案内等はカミラ様の役目になっていた。

 ちなみに本日、ルイーズ様は欠席となっている。


 大丈夫ですよ、私もご一緒しますからねと言う意味でかの方の手を握ると、こちらを見て頷いて下さった。

 産まれた時から一緒に暮らしていても、お兄様と距離が近い時は未だにドキドキするのに、いきなり完璧に好みすぎる成人男性が現れて実際に近くで会話もできてしまったら、私もきっと倒れてしまうくらい緊張するわ。



「では、ご案内いたします」


 カミラ様の隣に皇太子殿下、その後ろに殿下の護衛騎士と私、メイジーはさらに後ろを歩いている。

 カミラ様の説明を皇太子殿下は頷いて聞きながら時折り質問を返していた。うん、クールビューティーないつもの調子を保っていらっしゃるし、いい感じね。


 それにしても、お二人が並んでいるお姿を拝見すると、お似合いすぎて眼福だわ。願わくば、内面も良い為政者であり良き伴侶であって欲しい。そして、アルカナとエストリアの国交よ永遠であれ‥‥!

 でも希望と現実は違うから、私も見極めないと。そして、カミラ様にとって良い結果になるようにお手伝いしたいわ。


 ひと通り見学を終えると、中庭のガゼボでティータイムとなった。

 今日は王宮からベテランの侍女がこのために待機しており、セッティングをしてくれている。


「王女殿下とカリス小公爵夫人は従姉妹で大変仲が良いと聞いています。良ければ、あなたも一緒にいかがですか?」


 皇太子殿下が後ろに控えていた私に同席を勧めたのでカミラ様を窺うと「どうぞ」とのお返事をいただき、失礼してカミラ様の横に着席した。

 やや緊張気味だった王女殿下の雰囲気が優しくなる。それを見て、皇太子殿下が微笑まれた。


「私は5歳年上なので年齢が近いとは言えませんが、どうぞ気楽になさって下さい。名前もルシファーと呼んでいただいて構いません」


「かしこまりました。ではルシファー様も、私達の事は名前で」


「ええ」


 少し場が和やかな感じになり、やっとティーカップに手をつける事ができた。

 ルシファー様はお話が上手で、学園生活やカミラ様の少しプライベートな話まで聞き出せていた。始終ニコニコしているけれど、ご自身の話は最後まであまりなさらなかった。

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