3-17 授業風景3
デモンストレーションが終わると、生徒達は興奮した様子でレオとメイジーを取り囲んだ。
「はいはい、優しくて出来る騎士の俺に教わりたい生徒さんはこっち、鬼教官に教わりたい猛者はあっちに行ってねー」
生徒は二手に分かれたようで、それぞれ先程の魔法の説明を交えての指導が始まった。
メイジーの周りには女生徒が多い。
「二人ともフェアバンクスだから、呼び辛いでしょう? 私の事はメイジーでいいですよ」
その申し出に、きゃぁっとあちこちから黄色い声が上がる。名前で呼べるのが嬉しいようだ‥‥その気持ち、すごく良く分かるわ!
頷いていたら、手を繋いだままだったお兄様が、少し屈んで私を見た。
「では、僕達も練習しようか。何が苦手?」
あっ、これはゲーム内でもあったイベントだわ。魔法レベルが上がると、各属性の王子が個別指導してくれるのよね。
魔法を使う際は、頭の中でイメージしてそれを形にする。詠唱は必要ないけれど、声に出した方がやり易ければそれでもいい。
例えば水の球を投げたい時は、形や大きさを思い浮かべながら、手のひらから魔力の塊を押し出して標的まで飛ばして当てる。慣れると意識しなくても出来るようになるので、練習が大事だ。
「えっと、魔法のコントロールはそこそこ出来るのだけれど、連続して早く攻撃するのが難しいかしら?」
「なるほど、ではどんな感じか見たいから、向こうの的に連続で撃ってみて」
言われた通り、的に手のひらを向けて水の矢を放つ。軌跡を描きながら一本ずつ飛んで行った。
「うーん、思念を形にするスピードが遅いのか、魔力の通り道が狭いのか‥‥僕の魔力で今と同じ事をしてみるよ。見てて」
お兄様が的に手を向けると、先程とは比べ物にならない位安定感のある高速の矢が連なって的へ飛んだ。
「どうかな?」
「いいなぁ、私もこんな風に使えるようになりたいわ」
それを聞いたお兄様は、正面から向かい合って私の手を取った。
「ちょっといいかな? 動かないで」
お兄様の言う通り、手を繋いだ状態で立っていると、急に、右手が熱くなった。その熱が身体を通って左手に流れる。
「この感じだと身体の中の魔力経路もまだそれほど確立されてないと思うから、君が嫌じゃなければ、今みたいに僕の魔力で道筋を作るよ。それが一番早いから」
そんな申し出、受けるしかないわよね。
「お兄様の時間がある時で構わないので、お願いします!」
「うん」
「こら、そこ! 羨ましそうに見ない」
レオの声がしたのでそちらを見ると、レオチームの男子生徒が訴えていた。
「えーっ、だってあんないちゃいちゃした指導法ってあるんですか?」
「あるぞ。早く上達させたかったら、上級者の魔力を借りるのも手だ」
「じゃあ俺もレオさんの魔力借りたいです」
「断る。うちの優秀な若がやるから簡単に見えるが、素人が安易に真似すると受ける側の指先が爆発するからな〜。魔力の相性もあるし‥‥君とは無理です」
「うん、まあ間違いではないかな」
お兄様のくすくす笑う声がする。
「爆発って‥‥」
「それはないから大丈夫だよ。失敗しても亀裂が入るくらい」
「えっ、亀裂?」
「僕とリーディアは相性が良いはずだから、安心して。そんな無理もしないから、事故は起きないよ」
それはないけど、他には何かあるのかしら?
でもお兄様が何か危険な事をするとは思えないし、考えすぎよね。
やはり今後を考えると、魔法レベルは早めに上げておきたいわ。
読んで下さってありがとうございます。
次回からは、夕方6時台に一話ずつの更新に戻ります。
毎日更新できるよう頑張りますが、仕事をしながらの作業となりますのでご容赦くださいませ。
ちなみに、3章は54話+エンディングの予定です。




