3-9 大人の階段1
夕食後、お兄様がレオを伴って私の部屋を訪れた。
本来ならレオはお兄様が一日の業務を終えて帰宅した時点で勤務終了なのだけれど、無理を言って残って貰っている。
室内には私とメイジーが待機していた。アルマはお茶の準備をした後退出している。
私は当時記しておいたノートを持ち出して、7歳の時に見た夢の内容をお兄様に話した。
その後、メイジーが調査した内容を付け加える。
「主人公の“リリアン・ドイル”は実在します。ゲームと同じ外見、実家が花屋で平民の少女です。ただし、両親とは血のつながりがありません。入学パーティーでは、赤いドレスを着用していました」
お兄様の後ろに控えていたレオが口を開く。
「それについては、ケイ・ロス(炎の王子の護衛騎士)も言ってたな。主君の前で派手に転けたチェリーピンクの髪色のお嬢さんが居たって‥‥そうすると、若と姫ちゃんが退出する際に聞こえた声もその子の可能性が高いですね」
メイジーが続ける。
「“私のハーレムエンドの邪魔しないでよね”だったかと。ドイル嬢も姫と同じ内容の夢を見ていると考えた方がいいですね」
思い出すと胸が痛くなり、そっと押さえる。
向かいに座っているお兄様は考えを巡らせるように視線を移して口を開いた。
「知らない人物の容姿や名前が一致しているから、予知夢の類だと思うけれど‥‥今は、リーディアの不安を取り除きたい」
お兄様と目が合う。
「僕はこの先も君以外の女性と添い遂げるつもりはないよ。だけど、口約束よりも、形にした方がより分かりやすいし安心だと思う。リーディアが良ければ、もう入籍してはどうかな? 例えば、今月の君の誕生日とか」
えっ、入籍!‥‥ゲーム内では、入学後一年で意中の王子様と仲良くなり、将来を誓い合ってキスして終わりだったから、現実もそんなものかしらと思っていた。
こんなに具体的に話が進むなんて、想像もしていなかった。
「可能であれば、そうして貰った方が安心だわ‥‥」
「うん、大丈夫だよ。もう婚約してるし、君のデビュタントも終わってるから。入籍は済ませるけど、卒業するまでは今まで通り生活してくれて構わないよ」
それなら、平気かしら? 姓が変わるでもないし生活も今まで通りなら、そこまで周りが気を遣ったり騒がれたりもないような気がするわ。
私が納得して頷くと、お兄様は嬉しそうに笑った。
「では、さっそく父上と母上に話して来るよ。理由を聞かれると思うけど、反対はしないはず。そう言う風に話を持っていくから。あと、指輪も準備しないとね」
「若、俺もお供しまっす!」
レオも何だか嬉しそうだ。
そうしてあっさりと入籍が承諾され、今月19日の誕生日パーティーで公表となった。
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