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カリス公爵令嬢は幸せになりたい  作者: 成海さえ
第一部 第三章 魔法学園一年生(14〜15歳)
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3-5 入学パーティー2

 お兄様に手を取られ、ホールの中央でお辞儀をする。


「僕が魔法を使っても?」

「ええ、お願いします」


 この世界には魔法があり、それはこんな場面にも使われる。

 具体的に言うと、ダンスの際にパートナーの女性を美しく見せる為に、男性側が風魔法で少し演出をするのだ。


 もちろん、親しくなかったり嫌いな男性からドレスの裾や髪をひらひらさせられても不快なだけなので、これが許される関係は親密なものであるし、魔法を器用に扱えるのも一つのステータスなので、お兄様のような人材はとても人気がある。


「今夜は僕の友人にもリーディアを紹介したかったけれど、無理そうだね」


 器用にリードしながら、お兄様が苦笑する。


「こんなパーティーにはずっと出席してなかったから分からなかったけど、まだこんな感じなんだね」


 彼の視線を追って顔を向けると、女性が群がっている集団が2箇所あった。

 あれは‥‥多分、炎の王子と土の王子の団体ね。お二人ともまだ婚約者が決まっていないから、余計にそうなのだわ。


「‥‥お兄様も沢山お誘いがあったでしょうに、ほんっとうに二年間誰とも踊ってないの?」


 真偽を確かめたくて見上げると、彼はあっさり頷いた。


「うん、勉学と仕事の両立に時間を全振りしてたから」

 そしてにっこり微笑む。


「僕のパートナーはリーディアひとりで十分だよ」


 その美しい笑顔に見惚れてしまう。

 ゲームの開始時点では、お兄様は女性不信から前髪を伸ばして瞳を隠していたし、こんな素敵な笑顔をする性格では無かった。

 あざとい妹や過去のトラウマ等がありいつも憂いを帯びた表情で、主人公に出会ってやっと笑顔が増えて、好感度が上がると前髪を切るイベントが発生するのよね。


 私(主人公)の努力が実ってあの綺麗な瞳が現れた時の感動と言ったら‥‥!


「どうしたの? 考え事?」


 上の空で踊っていたら、お兄様に引き寄せられた。キラキラした青い瞳が間近に迫る。


「お兄様」

「ん?」

「‥‥が、大好きだなぁって」


 そう告げると、彼が嬉しそうな、優しい表情になった。

 つられて私も笑ってしまう。


「リーディアは、僕の機嫌を取るのが本当に上手だね」

「だって、いつもお兄様の事を考えているもの」

「うん、ありがとう」


 そんな幸せな時間が過ぎ、そろそろ退出しようと出口に向かっていた時だった。

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