表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カリス公爵令嬢は幸せになりたい  作者: 成海さえ
第一部 第三章 魔法学園一年生(14〜15歳)
23/172

3-3 再会

 お兄様に贈っていただいたブルーのグラデーションのドレスを纏い、ヘアアレンジもパールや生花でアルマが可愛く整えてくれた。


「本日の姫も世界一お綺麗です」


 エスコート中のメイジーはいつものごとく褒めてくれる。

 会場内からは楽団の演奏が漏れ聞こえていて、落ち着かない私はメイジーをお供に外でお兄様の到着を待っている状況だ。


 私の容姿は目立つため、デビュタントで同席していた貴族の令嬢たちは状況を察しつつ私に会釈をして会場へ入って行った。

 心配した従姉妹のカミラ様(同学年の第一王女殿下で縦ロールが美しく、ゲーム内では真の悪役令嬢とされていた方)も、一緒に待つ事をご提案して下さったのだけれど、申し訳ないのでお断りさせていただいた。


「ねぇメイジー、私、何かおかしい所はないかしら?」


「特に何も。姫は世界一の貴婦人ですよ」


 そわそわしながらの今宵何度目かの質問にも、彼女は律儀に応えてくれる。



 やがてホールの玄関前に見覚えのある馬車が止まった。馬に乗って並走していたレオがすぐに降りて私に笑顔を向けたあと、馬車のドアに手を掛けた。


「若、到着です」


「うん」


 ああ、久しぶりに聞いたお兄様の声だけで心臓が壊れそうだわ。ずっと会いたいと焦がれていた人のものだもの。

 少し身を屈めて扉をくぐったお兄様は、私を見て嬉しそうに微笑んだ。時が止まる。


「姫」


 動けないでいる私の背を、メイジーがそっと押した。気付くと私はドレスの裾を持ち上げてお兄様に向かって駆け出していた。そのまま腕を広げる彼の胸に飛び込む。


「リーディア、久しぶり。そのドレス、着てくれたんだね。ありがとう」


 お兄様の美声は変わらず落ち着いていたけれど、少し低い大人のものになっていた。


「会いたかったよ‥‥寂しい思いをさせてごめんね」


 背中に回る手が優しく撫でてくれる。お返事をしたかったけれど、涙が止まらない。


「うーん‥‥パーティーに出席するのをやめて、このまま邸に帰ってしまおうか?」


 その方が君を独り占めできるし‥‥と呟いて、お兄様は腕にそっと力を加えた。私は呼吸を整えて口を開く。


「それはダメよ」


 顔を上げると、お兄様の綺麗な瞳が見えた。


「どうして?」


「他の王家や公爵家の皆様もご出席されているのに、私達だけ突然の欠席はできないわ」


「まあ、それもそうだね」


 そう言ってお兄様は軽く私を抱き上げて建物内へと歩き出した。


「メイジー、女性用の控室はどこかな? 侍女が待機してると思うんだけど」


 ええ、まずはこの崩れたメイクを何とかしないとね。自分で歩けるから降ろしてってお願いしようと思ったけれど、思い直してお兄様の胸に身体を寄せた。


「取り乱してごめんなさい」


 デビュタントを終えた淑女が、人前で走ったり泣いたりしてはいけなかったわ。

 パーティーが既に始まっているので、通路にはもう警備兵ぐらいしか居なかったのが幸いだ。


「いや、それは想定内だったから良いんだ。ただ、この再会は邸で行う予定だったのに、面接で色々あったからね」


 面接が長引いたって言ってたわよね。何が起こったのかしら? 帰りの馬車の中で聞いてみようかな。



 やがて目的地に着くとお兄様は私を降ろして「ここで待ってるから行っておいで」と笑顔で送り出してくれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ