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カリス公爵令嬢は幸せになりたい  作者: 成海さえ
第一部 第三章 魔法学園一年生(14〜15歳)
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3-2 再会前2

 入学式とデビュタントを無事に終えた後、夕方からのパーティーに備えて邸で一息つく。


 入学式での新入生代表は“土の王子”シリル様、在校生代表は“炎の王子”アレン様だった。

 夢で見た乙女ゲームのオープニングもこんな感じだったわと思う。

 制服も似ているし、このまま主人公が現れてゲーム通りに進むのかしらと考えると胸が痛い。


「姫、お疲れですか?」


 隅に控えていたメイジーがこちらへ歩み寄り、ソファーに座る私の前で膝をついた。彼女もずっと朝から付き添ってくれている。


「ええ、少し疲れたけど、ようやくお兄様に会えるんだもの。気合い入れないとね」


「二年ぶりでございますね。本当に二年も成長期の姫の御姿を全くご覧になられないとは。信じられません」


「それだけ忙しかったのよ。でもありがとう、メイジー」


「かの方は文官の昇級試験も終えましたし、学園の単位も全部取り終えたと伺っておりますので、明日以降は姫中心の生活を送って頂ける筈ですよね。そうでないと困ります」


 当然のように紡がれる台詞に、感謝して微笑む。

 お兄様は公爵家の長男だもの、私にばかり構っていられないのは分かってる。だから私もお兄様の隣に胸を張って立っていられるように自分を磨いて来た。

 だけど‥‥やっぱり好きな人の側に居られたらと思ってしまう。



 ノックの音がして、来客の旨を伝えられる。

 メイジーが扉を開けて出迎えると、そこには花束を抱えた満面の笑みのレオが立っていた。


「姫ちゃん! あれ、もうデビュタントの純白のドレスじゃないんだ‥‥残念。アルマさんが絶対恋に落ちるって断言してたから、俺また好きになっちゃうって期待してたのに」


 明らかにしょんぼりしているレオに、メイジーが冷たく問う。


「いつまでも着てる訳がないだろう? それで要件は? 姫はお疲れでいらっしゃるから、手短に話せ」


「ん、これは若からデビュタントのお祝い。それと伝言“面接が長引いてるから、予定よりも少し遅れそう。でも必ず行くから”だって。あとパーティーの衣装も向こうで着替えるから受け取りに」


「了解、じゃあさっさと若の衣装持って王宮に戻れよ」


「えーっ、お茶の一杯も飲ませてくれないの?姫ちゃんどう思う⁈」

 よく見る光景に笑ってしまう。


「レオ、お疲れさま。時間があるなら、せっかくだしデビュタントのドレスを着るわ。お化粧と髪型はこのままで許してね」


「姫、こんな奴に優しくしなくて良いですよ」


「メイジー、俺だって心を捧げているレディのデビュタント姿を目に焼き付けたいのよ。あー、ルディにも見せてやりたいなぁ‥‥お、そうだ。今度手のひらサイズの姫の姿絵を用意して下さいませんか? 俺とルディの二枚分」


 おねだりするレオの足元に、氷の鞭が飛んだ。レオが大げさに避ける。


「図々しい奴は帰れ」

「やだぁ、俺の妹ってばすぐ暴力〜」

「脅してやるだけまだ親切だ」

「分かったわ、姿絵はメイジーのぶんも入れて3枚ね」

「そうなると若も欲しいと思いますし、4枚じゃないですか?」


 そうやって賑やかに過ごすうちに、入学パーティーの時刻となった。

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