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カリス公爵令嬢は幸せになりたい  作者: 成海さえ
第四部 魔法学園三年生(17歳)の冬〜春
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番外編2 マタニティライフ

 カミラ様が無事に出産を終えられ、エストリアに皇太女様がご誕生された。


「エストリアは女性も皇帝になれるから、次はイブリン様と同じ女帝になるのね」


 カミラ様からのお手紙を広げている私の隣で、お兄様が微笑んだ。


「そうだね。彼の国の皇族は、第一子に能力が集中しているそうだから」

 私の目立ってきたお腹をそっと撫でる。

「僕達の子も、元気に生まれてくれるといいな」


 最近は周りの過保護に拍車がかかっており、私の護衛に付いているメイジーとルディは、例え僅かな段差でもさっと手を貸してくれるし、小さなものでも自分で荷物を持つ事がなくなった。


 イブリン様やベネット閣下からも体調を気遣うお手紙が届き、ルイス様は週末になるとプレゼントを片手にこの辺境伯城を訪れて下さっている。

 お兄様のキスを頬に受けながら手紙を読み進め、小さな悩みが書いてあったので目をとめる。


「ルシファー様は、カミラ様が赤ちゃんのお世話にあまり時間を取られると、『私にも構って欲しいな』と拗ねてしまわれるんですって‥‥ちなみに、陛下は相変わらずカミラ様だけに全愛情を注いでいらっしゃるそうよ」


 そのため、陛下がご公務をされている間に、なるべく皇女様のお世話をするようになさっているらしい。


「エストリアの皇室の子育てってどうなってるのかな?」


「基本的に乳母役の侍女が居るけれど、ご自分の母乳で育てたかったら、それでも良いみたい。カミラ様は、なるべくお子様と直接関わりたいと考えていらっしゃるわ」


「そうなんだ。でも、陛下の気持ちも分かるけどな‥‥僕も、リーディアに構って貰えなくなるのは寂しいから」


 この国の伯爵位以上の貴族も、子供の世話は使用人に任せるのが一般的だから、カミラ様のお考えの方が珍しいのよね。

 お兄様の手が私の腰にまわり、引き寄せられ、膝の上に座った。


「重くなったでしょ?」

 身体に腕をまわして尋ねたら、お兄様は首を横に振って微笑んだ。


「二人分だからね‥‥でも、重くないよ。君と子供を抱っこできて幸せだなって思うくらい」


 こんなこと言ってくれる旦那様っているのね‥‥ううん、私の周りの人達はみんなそうかもしれないわ。


「ディラン様は、本当に私が大好きなのね?」

「うん、もちろん」

「ありがとう、私もよ」


 そう言ってキスをした後、よいしょと立ちあがる。


「最近、みんなが何もさせてくれないから、運動不足なのよね」

 私が腕をぐるぐる回しているのを見て、お兄様は笑っている。


「明日は僕も休みだから、散歩にでも行く?」

「デートね! 嬉しいわ」


 飛び跳ねようとしたら、お兄様が慌てて立ちあがり脇を支えられる。


「私、お腹は大きいけれど、けっこう動けるのよ?」

「うん、でも心配で」

 見つめ合って、二人で笑ってしまった。




 翌日、ディラン様と二人でお庭を散歩していたら、来客の知らせがあった。


「ディラン、ディア姉様、ご機嫌よう」


 笑顔で現れたのはルイス様だった。今日は荷物が多い。


「姪に贈るプレゼントを、一緒に選んで貰おうと思って。カタログとサンプルを沢山持って来ちゃった♡」


 夏なのでお兄様から日傘を差し掛けられ、さらにメイジーに氷魔法で周囲の気温を下げて貰っていた私は、お兄様とルイス様お二人に付き添われながら客室へ向かった。




「ところでさ、思うんだけど」

 お茶を口にしつつルイス様が話し始める。


「我が国にも、エリアナ様のように精霊力が豊富で仕事のできる女性が居るでしょ? 男女関係なく能力のある人が宗主になっても良いんじゃないかなって考えてるんだよね‥‥今すぐは無理でも、私の代では実現したいなぁ」


「僕も基本的には賛成だけど、子供を産むのは女性にしかできないからね‥‥そこをどうやってサポートするかだよね」


「だよねぇ。精霊力を持つ子は、一定数居てくれないと困るもんね。その辺りは、専門家の話を聞きながらまた検討するよ」

 ルイス様の髪は短いままだ。以前のように伸ばすおつもりはないらしい。



 沢山おしゃべりしたあと乳幼児用のおもちゃを選び、ルイス様は楽しそうに帰って行かれた。メイジーとルディも今日はもう帰宅している。


 お兄様と一緒に私の部屋へ入り、ソファーに座って休む。アルマがお茶を淹れてくれたので、優しい香りに一息ついた。今は冷たいものより温かいものを出して貰っている。

 私は隣のお兄様に寄りかかって目を閉じた。最近は昼間でも眠くて困るわ。


「‥‥リーディア、キスしていい?」


 耳元で彼の声が聞こえたので、目を閉じたまま頷く。いつもは許可なんて取らないのにどうしたのかしら?


 と思ったら、それは目が覚めるくらい深いものだった。顔が離れ、真っ赤になっている私を見て満足したように微笑んで、再び抱きしめられた。


「ああ、早く産まれないかなぁ‥‥」


 小さな呟きも聞こえてくる。お兄様も健康な19歳だものね、色々あるのだわ。それに抗議するようにお腹をトンと蹴る気配もする。


 これは、生まれてくる子供と夫への時間の配分を、今から考えていた方がいいわ。エリアナ様にご相談してみよう。


 そんな事を思う夏だった。



お久しぶりです|・ω・*)

リアクションボタンや⭐︎の評価が増えていて、嬉しかったので書いてみました。

ありがとうございます!

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