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カリス公爵令嬢は幸せになりたい  作者: 成海さえ
第四部 魔法学園三年生(17歳)の冬〜春
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Ⅳ-16 これからもずっと(最終話)

 いつものように、カリス辺境伯城の転送部屋までお見送りに行く。


「ディラン様、レオ、行ってらっしゃい」

「行ってらっしゃいませ」

 後ろでメイジーとルディが礼をする。


「行って来ます」

「姫ちゃん、なるべく早く帰るからね〜」

 装置が起動して、二人の姿が消えた。



「お嬢様、今日は街へお出かけの予定ですので、馬車のご用意をして参りますね」


「ええ‥‥」

「姫、どうかなさいましたか?」

 メイジーが心配そうに私の顔を覗く。


「あのね、何かずっと胸の辺りがムカムカしているの」

 それを聞いて、騎士二人は顔を見合わせた。



 お祖母様が女性のお医者様を呼んで下さり、診察の結果、私の妊娠が判明した。

 お祖父様とお祖母様はとても喜んで下さって、夕方の食卓には、私の大好きな手作りのごちそうばかり並んでいた。


「お祖父様、お祖母様、ただいま戻りました」


 着替えたお兄様も食堂に顔を出して、私の隣の席へ移動する。今日はレオも招待されていた。


「あれ、この料理‥‥リーディアの誕生日でもないし、どうしたの?」

 お兄様が私をご覧になった。

「ディランに報告があるのよ」

 お祖母様の言葉に続いて席を立つ。


「ディラン様、私、妊娠したの‥‥」


「本当に? やっとだね!」


 ディラン様にぎゅっと抱きしめられる。

「姫ちゃん、おめでとう! ますます身体を大事にしないとだね〜」

 レオの嬉しそうな声も聞こえた。


「さあ、料理が冷めないうちに頂こう」

 お祖父様のお声がけがあり、その後は身内だけの楽しい食事会が行われた。


◇◇◇


「リーディア、良かったね」

 寝室に入っても、お兄様はニコニコしている。少し伸びた髪を撫でられたので、


「ディラン様も、父親になる準備をしておいて下さいね?」

 と言ったら、

「僕はいつでも出来てるよ」

 と言われてしまった。


「それにしても、この子が女の子だったら、僕はまた泣かされるんだろうなぁ」


 そんな呟きも聞こえる。反射的に“そんなことないわ”と言いそうになったけれど、過去を振り返って思いとどまる。私、確かにお兄様を何度も泣かせているわ‥‥


「大丈夫よ、ディラン様が泣かなくていいような世界をこれから私達が作っていけばいいのよ」


「ふふ、そうだね‥‥でも、君と一緒だったらどんな道でも楽しいよ」


 頬にキスされてしまった。お兄様はそう言って下さるけれど、私は精霊王になった彼の方と約束したのだ。


「ディラン様とこの子は、私が幸せにします」

 そう宣言したら、嬉しそうに頷かれた。


「うん、よろしくね」




 7歳の時に夢を見てから、色んな事があった。もう駄目だと思う場面も何度か経験したけれど、何とか切り抜けて来られた。

 大きな事件をいくつか経験したから、この先はもう平穏無事で居られる‥‥とは思っていない。

 でも何が起こっても、希望は捨てずに最後まで頑張る事ができたらいいなと思う。




「リーディア、どうしたの?」

 無言で居たからか、お兄様に尋ねられてしまった。


「この先も頑張ろうって決意していたの」

「ふふ、だからキリッとした表情だったんだね」

 お兄様は笑っている。


「体調はどう? もう寝た方がいいのかな」

 膝の上に乗っていた私を軽く抱き上げ、ベッドに下ろしてくれる。


「お兄様、」

 呼びかけて、あっと気付く。名前で呼んでなかったわ‥‥


「前から思ってたけど、君は僕のことを未だにお兄様って呼ぶ時があるよね?」


 んん、気をつけてたつもりだけれど、知らないうちに呼んでいたのかしら‥‥


「まあいいよ。僕を男性として見て欲しかっただけだから」


 彼の手が、私の頬を撫でる。その愛しそうな瞳を見ていたら、色々思い出して頬が熱くなった。


「ふふ、ほらね?」


 何がほらねなのか分からないけれど、お兄様の機嫌がいいので良しとしよう。彼は触れるだけのキスをして、私のお布団を整えたあと横になった。

 彼に寄り添うと抱きしめられる。その温もりに包まれながら目を閉じた。


 みんなの明日が素敵な日でありますように。



最後までお付き合いいただき、ありがとうございます!!

おかげさまで無事完結できました。

楽しんでいただけましたでしょうか?


もし良かったら、“お疲れさま”とか“面白かった!”とか一言でもいいので、感想を聞かせていただけたら嬉しいです。

⭐︎の評価やリアクションボタンも押して下さると、作者が大変喜びます。


あなたとまたどこかでお会いできますように。

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