Ⅳ-10 辺境伯城での暮らし
祖父母は私達を歓迎して下さった。お部屋も、客室を改装して私達夫婦の寝室を作り、私とお兄様用にそれぞれの部屋も用意されていた。
「リーディア、お帰りなさい。大変だったわね。よく頑張ったわ‥‥この国のために、ありがとう」
お祖母様は泣いていた。隣で、お祖父様も息を吐きながら頷いている。
「ダレル(リーディアの父親)やソード大公と話したのだが、ディランが望むなら、中央を出てここで私の補佐として働き、いずれは辺境伯を任せてもいい。よく考えてみなさい」
「ご配慮ありがとうございます。リーディアとも話し合ってみます」
使用人や騎士団への挨拶を終えると、お兄様はお祖父様とお仕事の件で離席されたので、自分の部屋で待つことにした。一緒に引っ越した私の騎士達と侍女のアルマも控えている。
「久しぶりですね、懐かしいなぁ‥‥この連なる山が近い感じ」
ルディが窓の外を見ながら呟く。
「姫ちゃん、暖かくなったらまた遠乗りに行きましょうか? 前も楽しみにされてましたよね」
レオの言葉に、以前こちらでお世話になっていた頃を思い出す。
「レオは王都から馬で駆けてきて疲れているのに、私のワガママによく付き合ってくれたわね」
王都から馬→辺境伯城で一泊して朝から私を連れて遠乗り→夕方には王都へ向けて馬だったような。
「姫ちゃんの頼みであれば、何でもしますよ俺」
「私もよくお連れしたけどな」
レオが居る間は、メイジーが私の側を離れることができた。なので、当時は二人揃って護衛と言うのはあまり無かったわ。
「本当に、自然が豊かでございますね。木の実や山菜取りに行ってみたいです」
「俺がご案内しますよ、アルマさん」
「前回、アルマは数日間しか滞在していないものね。ルディやメイジーに連れて行って貰うといいわ」
「ええ、そうさせて頂きます」
みんなで話していたら夕食の時間になり、久しぶりのエリアナ様の手料理を、また懐かしく思いながら美味しくいただいた。そう言えば、ここには家庭菜園もあるのよね。またお手伝いしたいな。
◇◇◇
夜が来て、寝室でお兄様と二人になる。
「リーディア、おいで」
いつものように招かれ、膝の上に座ると、彼は私の短くなった髪を撫でた。最近はよく髪を撫でられる。試練の事を、まだ気にしているのね‥‥お顔を見たら、微笑んでキスされた。
その合間に聞いてみる。
「そう言えば、お祖父様が仰っていた将来は辺境伯にって話は、どうするの?」
「君はどう思う?」
今度は頬にキスされた。私は考えながら意見を述べる。
「私はディラン様と一緒に居られるなら、どちらでもいいわ。ただ、今すぐにと言うのは、難しそうね」
官吏のお仕事は激務と言っていたし、そんな職場から優秀な人材が一人抜けるのは、残される側が大変だわ。
「そうだね、僕も入ってまだ三年だから、もう少し中央の様子を知りたいかな。その方が、こちらの仕事もしやすくなると思うから」
耳に優しくキスされた。今夜はスキンシップが多い気が‥‥そうだわ、試練を終えてからは私の体調が良くなくて、仲良くするのはずっとお預けだったのだわ‥‥一ヶ月くらいになるかしら?
私の頬が熱くなるのを見て、お兄様は私を抱きしめた。
「リーディア‥‥話の続きは、明日でいい?」
「はい」
私が頷くのを確認して、ベッドに運ばれる。
その夜は、お兄様に何度も求められた。




