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カリス公爵令嬢は幸せになりたい  作者: 成海さえ
第四部 魔法学園三年生(17歳)の冬〜春
155/172

Ⅳ-1 不穏

 結局、アレン様がカミラ様に話しかける前に王太子殿下によって会場の外へ連れ出されたそうで、その夜は何事もなく終わった。

 カミラ様が心配だったけれど、王宮には“影”も居るし、何より上級魔族が側に付いているので、問題ないだろうと言うことだった。



「カミラ陛下はブレスレットを着けていらっしゃらなかったので、ちょっと分からないですね」

 レオの報告もそんな感じだった。


「アレンの悪意が直接リーディアに向いているとは考えにくいから、また明日、ルイス殿下に様子を聞いてみるよ。だけど、この件が落ち着くまで外出は控えた方がいいね」


 お兄様の視線を受けて、メイジーは“かしこまりました”と頷いた。




 カミラ様と約束していた観劇だけは、予定通りに行われた。


「久しぶりに見ても、やっぱり楽しいわ」


 嬉しそうに感想を述べるカミラ様を拝見していると、私も心が軽くなる。よく通ったスイーツ店の個室でお気に入りのベリーのタルトを召し上がっていらっしゃるお姿も懐かしい。


「そう、来て良かったね」

 相変わらず色気が溢れているルシファー陛下は皇后様に話しかけながら金の瞳を細めた。


「あの、贈り物があるのですが」

 私はメイジーに合図をして、ラッピングされた箱を差し出した。


「ご懐妊おめでとうございます」

「リーディア、ありがとう。開けてもいい?」

「ええ、もちろんです」


 中には、レースで編まれた新生児用のセレモニードレスが入っていた。


「まあ、素敵ね。男女どちらでも似合いそうよ」


 カミラ様はドレスを広げてルシファー様に見せていらっしゃる。陛下は笑って私にお言葉をかけられた。


「リーディア嬢、ありがとう。カミラがこんなに喜んでいるのを見るのは、久しいな」

「もう、そんな事無いでしょう?」


 カミラ様に抗議されても嬉しそうだ。ルシファー様は、私を眺めながら、笑顔のままふと尋ねた。


「そう言えば、あなたの精霊はまだ邸に?」


 使者様のことね。

「ええ、お元気にされていますよ」

「そう‥‥なら良かった」

 それきり使者様の話題は出なかった。




「あれ以来、ブレスレットの反応なしですね」

 お二人をお見送りした後、私の護衛についていたレオが言う。


「姫に対しての悪意ではなかったのかもしれないな」

「何にせよ、お嬢様が無事に過ごされているのは良いことじゃないですか?」


 馬車のドアを開けてくれながら、ルディが答えた。


「うーん、まあそうなんだけどさ。何かモヤモヤするって言うか‥‥うーん」


 レオの手を取り、苦笑しながら馬車に乗り込む。メイジーも護衛のため後に続いた。


 アレン様は、宮廷医によって精神的な問題があると診断され、現在カウンセリングを受けているそうだ。快方に向かうと良いけれど。

 本人が話している内容が国際問題に関わることなので、念の為、しばらくは王宮の一角に隔離されるらしい。



◇◇◇



 その数日後、日程を終えてエストリアへ帰国されていたお二人の馬車が何者かによって襲撃を受けた。犯人はパイモンの一撃により殲滅、辛うじて生き残っていた首謀者のみ捕えられ、アルカナへ引き渡された。


 当初、国境を荒らしている盗賊だとされたその首謀者は‥‥アレン様だった。調書によると、犯行当時行動を共にしていた悪魔が居たと言うことだった。



ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

第四部は16話の予定で、20時台に更新します。

ゴールに向かって駆け足で進んでまいりますので、よろしくお願いします*・゜゜・*:.。..。.:*

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