III-34 年始のパーティー(第三部最終話)
カミラ様の歓迎パーティーは大規模に行われた。エストリアの皇帝陛下も同席されていたので、内外に親密度をアピールしておきたかったらしい。
私はカリスを表す青系の上品なドレスを選び、お兄様も同色のスーツを着用している。
「人が多いですね。国内の主要貴族の顔ぶれがこんなに揃うなんて、珍しいな」
レオが会場を見渡して感心している。
「と言うか、伯爵位以上の貴族って、こんなに居たんですね」
ルディも若干呆れているようだ。
「精霊の血筋が途絶えないように統制しているからな」
メイジーは私が人にぶつからないように、道を空けながら返事をした。
カミラ様を探すと、遠くで人々に囲まれている。隣にはルシファー様、後ろにパイモンが控えている。黒い衣装だったけれど、やはり目立つわね。
国王陛下や王太子殿下、途中で出会った両親や学園でご一緒しているご令嬢達に挨拶を済ませ、椅子に座って一息ついていた時だった。
「ああ、久しぶりだね、アレン」
お兄様が立ち上がったので、私もそれに倣う。目の前に現れたのは、炎のワンズ公爵家の嫡男、アレン・ワンズ様だった。
「学園を卒業してからは、ディランと会う機会もなくなったな」
アレン様は笑顔でお兄様に話しかける。学園に在籍されていた頃は明朗で皆のお兄さん的な感じだったのに、今は違う印象を受けた。
何だろう‥‥目が笑ってない?
「僕もそうだけど、アレンがこんなパーティーに出席するって珍しいね‥‥リーディアも、会うのは去年の春以来じゃない?」
お兄様は私を振り返り、微笑んだままそっと私の腰に腕を回して引き寄せた。
『リーディア、笑って』
そう囁かれたので、自然な笑顔を作る。
「そうね、アレン様、ご無沙汰しております」
「リーディア嬢も元気そうで何より。今日は、カミラ皇后がご懐妊したって聞いたから、確認しに来たんだ。何かの間違いじゃないかってね‥‥」
アレン様の表情は笑っているけれど、目の焦点が合っていない。この方が現れてからブレスレットの違和感をとても感じたので、笑顔のままさりげなく確認したら、お花が三輪咲いていた。
「間違いではございませんわ。お医者様にも確認して頂いたそうです。カミラ様は、ルシファー様のお子を身ごもっていらっしゃいます」
誤解は解いておきたかったので事実を告げると、残りの二輪がふわりと開いた。
「いや、そんなはず無いが‥‥とりあえず、挨拶して来るよ」
「お待ち下さいませ!」
引き止めようとしたら、お兄様に抱き寄せられる。
「レオ、後をつけて。ルディは王太子殿下に報告を。メイジーはリーディアの側に」
「承知致しました」
レオとルディはすぐに居なくなった。不安を抑えてお兄様を仰ぐ。
「数ヶ月前から、アレンの様子がいつもと違うと報告は受けていたんだ。彼はずっとカミラ皇后を慕っていたからね‥‥まさかここまでとは」
真剣な表情で、もう見えない友人の背中を追うように眼差しを送っていた。
読んでいただきありがとうございます。
気になる所で終わっていますが、ゴールに向けて準備する時間を頂きたいと思います。
第四部は16話ぐらいになりそうです。なるべく早く更新できるよう頑張りますので、しばらくお待ち下さい。
それでは、また!




