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カリス公爵令嬢は幸せになりたい  作者: 成海さえ
第三部 魔法学園三年生(16〜17歳)の春〜冬まで
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III-32 効果

 冬の離宮でリフレッシュした私達は、来た道を戻っていた。お兄様、もう国境に着いたかしら?

 街道沿いに検問所があるので、そこで落ち合う予定になっている。

 馬車は1台で御者台にルディとメイジーが座り、その前をレオが先導していた。まだ昼過ぎで明るかったけれど、国境近くの森に差し掛かり、日差しを遮るものが増えた時だった。


 手首に違和感を感じて確認すると、ブレスレットの花が4輪開いていた。


「姫、野盗です。すぐ済ませますので、そのままでお待ち下さい」


 メイジーの声が聞こえて馬車が止まった。窓のカーテンを開けたら、既に氷の防御壁に囲まれており、争う音と騒がしい声しか聞こえない。


「クソッ魔法騎士か!‥‥退けっ!」


 やがて防御壁が解かれ、剣を鞘に収めながらレオが走って来た。


「姫ちゃん大丈夫? 怖くなかった?」


 使者様を抱っこしていた私は、窓からレオを確認する。怪我などは無いようだった。厚手のコートを羽織っていて息が白い。


「私は大丈夫よ。みんなは無事?」

 そう尋ねたら、レオはにっと笑った。


「もちろん。あんな雑魚に負ける筈ないじゃん、なあ、メイジー?」


 周囲を確認していたメイジーも戻って来た。いつもと変わりない表情に安堵していると、彼女の視線が私の腕で止まった。


「ああ、雑魚だったな‥‥ところで姫、ブレスレットが反応したんですね」


「えっ、そうなんですか?」

 ルディも御者台から降りて来た。騎士三人で私の手元を見る。


「花四つって事は、そこそこの悪意を持ってたって感じ?」

「だろうな、野盗だし」

「へぇ、本当に感知するんですね」


 しばらく観察した後、やがてお花も蕾に戻ったので、お兄様が待っているからと再び国境を目指した。




 お兄様は馬に乗って訪れており、それをメイジーが受け取って、馬車の中へお兄様を迎える。

 検問所で野党の報告をしていたレオが戻り、再び出発した。


「久しぶりのカミラ皇后はどうだった?」


 そう聞かれ、私はカミラ様ご懐妊をはじめ、色んな話をした。お兄様はずっと笑顔でお返事をして下さった。


「そう、ブレスレットを頂いたんだね。効果も確認できたなら、外出時は身に付けていた方がいいかな」


「ええ、とりあえず王都にいる間は用心しておくわ」

 周りで心配してくれてる人の為にも。


「うん」

 お兄様は笑顔で頷いた。向かいの椅子で使者様が丸くなっているので手を握ったりはしていないけれど、数日ぶりに見るお兄様は、やっぱり麗しい。


「そう言えば、リーディアが卒業した後なんだけど、カリスの辺境伯城で過ごす形で話を進めてるよ。転移ゲートの使用許可を取ったし、お祖父様に話もしたんだ」


「お祖父様は何て仰ったの?」

「歓迎して下さるそうだよ」

「良かった!‥‥私もご挨拶しておかなくちゃ」


「そうだね。それ以外に、年末年始にやりたいことはある?」

 お兄様はいつも私の意志を確認して下さるのね。


「年が明けると挨拶回りで忙しいから、それまではお邸でのんびりしたいわ」

「わかった。ではそうしよう。僕も読みたい本が溜まってるからなぁ」

「私もそうだわ。イルゼ様からお借りしたシリーズものが面白くて」

「ふふ、睡眠不足になりそうだね」


 それから私達は王都に戻り、年明けを迎えた。

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