2-3 胸問題
ゲームの悪役令嬢キャラだったリーディアの体形は、スレンダーだった。引きこもりがちで精神的にも弱かったので、そのイメージ通り体の線は細く、胸も小ぶりに描かれていた。
「さて、どうしたものかしら?」
目の前のソファーに座ったお母様は、紅茶を一口飲んでから腕組みして私を凝視した。
今日のために王都からこの辺境伯領を訪れて下さっており、王都へ移る準備を一緒に進める予定となっている。
「リーディア、立ち上がって身体ごと横を向いてみて‥‥では腕を少し上げて、ワルツのホールドを組んで‥‥うーん、そうねぇ」
別室には、王立魔法学園の制服とデビュタントのドレス、そして入学初日に行われる新入生歓迎パーティー用のドレスの採寸に来た仕立て屋が控えている。
「清楚なイメージを維持する意味でも、やはり学園を卒業するまでは、胸のボリュームを抑えていきましょう。その方がいいわ」
社交界経験豊富なお母様がそう決めたのなら、私に反対の意はない。
お母様は席を立って私の側へ寄り添い、そっと手を取って目を合わせた。
「リーディア、胸が豊かなのは間違いなくあなたの魅力の一つよ。ただ、14歳の女の子にはまだ早いと判断したの。もう少し大人になったら披露しましょうね?‥‥そうね、ディランとの結婚式くらいが良いかしら。みんな驚くわ。ディランも含めてね」
ふふっと楽しそうに微笑むお母様は、少女のように可愛いらしかった。
そして胸のボリュームを調整するビスチェも用意され、王都へ出発する準備が整っていった。
余談だけれど、後でメイジーに学園内の恋愛事情について聞いたところ、
「まあ、年頃の男女が集まっていますから‥‥見目が良い生徒は特に人気が高いですね。身分に関係なく、勘違いして暴走する輩もいますし、警戒はした方がよろしいかと」
「メイジーも、男子生徒から告白とかされたの?」
と聞いたら、当時を思い出したのか溜息と共に答えがあった。
「私は恋愛に興味がなかったので。加えて、なぜか告白して来るのは勘違い野郎が多く、しかも全員しつこかったので、全て拳で黙らせました」
「そ、そうなのね‥‥」
本人に恋愛する気がないなら、しょうがないわよね。
「姫に関しては、私がお側に控えておりますので大丈夫ですよ。悪い虫は、誰であろうと捻り潰します」
「頼りにしてるわ。ありがとう、メイジー」