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カリス公爵令嬢は幸せになりたい  作者: 成海さえ
第三部 魔法学園三年生(16〜17歳)の春〜冬まで
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III-17 従姉妹

 翌日下校すると、既にロージーはこの邸に荷物を置いて王宮へ向かったらしい。侍女長から説明を受ける。


「ベイリーさんは夕刻お戻りです。時間は前後するそうなので、戻り次第、ご挨拶に伺わせます。その後、私達使用人と共に食事を済ませ、夜は作法や所作のおさらいとモンテネールについての学習、わが国の主要貴族の暗記などを行う予定となっております」


 なかなかハードだわ。慣れないお仕事の後にも勉強が待っているなんて、自分で選んだ道とは言え、疲れるわね‥‥


 彼女は客人扱いではなく、この邸に修学の為に滞在すると言う名目でお兄様が許可を出したらしい。なので、王宮勤めの経験がある侍女長が指導役を担っており、私はあまり関わる事はない。


「お疲れだと思うから、頃合いを見てお夜食も出してあげてね。侍女長もお疲れさま。ロージーをよろしくね。それと、くれぐれも温室には近寄らないようにお願いします」


「かしこまりました、奥様。では、ベイリーさんがお戻りになりましたらご挨拶に伺わせますので、よろしくお願い致します」


「分かったわ」



 いつもの習慣で、夕方使者様と温室でお茶をしていると、入り口の辺りが騒がしくなったので、メイジーに様子を見に行って貰った。

(ルディはお兄様のお迎えで不在)


「ベイリーさんが姫に挨拶をしたいと」


 その報告に首を傾げる。

「温室には近付かないように説明してる筈だけど‥‥今は取り込んでいるから、後にしてと伝えてくれる?」


「かしこまりました」


 その後ルディが一人で戻り、お兄様は残業で遅くなるそうなので、私は先に食事をとる事にした。


「奥様、お食事中に失礼いたします」


 侍女長が一人の少女を伴って現れた。青い瞳に茶色の髪、清楚な感じの可愛らしい外見だ。


「ご紹介させて頂きます。今日からこちらに滞在いたします、ベイリーさんです」

「初めまして! お会い出来て光栄です。ロージー・ベイリーと申します。どうぞよろしくお願いいたします」


 お辞儀も綺麗だ。頑張っているなら、応援したい。私は微笑んだ。


「覚えることが多くて大変かもしれないけれど、体調に気をつけて頑張ってね」


「ありがとうございます! あの、もしよろしければ、お邸の見学をしたいのですが‥‥リーディア様の衣装部屋にも興味があって。私、こんな大貴族のお邸に住むのが憧れだったんです‥‥モンテネールってどんな所なんだろう。閣下にお話を伺ってみたいなぁ」


 笑顔で聞きながら、ん? と思っていると、侍女長が注意する。


「ベイリーさん、失礼ですよ。身分差がございますので、お名前ではなく、奥様とお呼びなさい。それと、遊びに来たのではないのですから、学ばねばならない事柄を優先して下さい」


 注意された彼女は落胆する。


「えー、だって従姉妹じゃないですか‥‥」


 まあそうなのだけれど、王宮で働くなら線引きは厳しめにしておこうと話し合っていた。他国の王弟殿下に仕えるなら尚更だ。

 まだ慣れてないのかしらと気を取り直して、返答をする。


「温室から向こうには入らないでね。3階は家族の居室だから、それ以外の場所だったら、時間があれば見学しても構わないわ。邸の使用人の誰かに案内して貰ってね」


「わあ、ありがとうございます。従姉妹だから、気持ちが通じるのかしら」

 ロージーは手を合わせて嬉しそうに笑う。


「ところで、小公爵様はまだお帰りにならないんですか?」


「ディラン様は、残業で遅くなるそうだから、挨拶は明日にするといいわ。私からも話しておくわね」


「はぁい、でも、いいなぁ‥‥水の王子様、私も名前でお呼びしたいなぁ」

 ん?


「ベイリーさん、失礼ですよ」



 二人が退出した後、メイジーがため息をついた。隣のルディに話しかける。


「修道女を希望していた割には、欲が強いように思えるのは私だけか?」


「ええ、俺にもそう見えました。年頃の女性らしい好奇心と言えば、そうですけど‥‥でも平民でありながら初対面で上位貴族にお願いをするなんて信じられないです」


「甘やかされて育ったのだろうな。確か、ベネット閣下の理想の女性像は、母親のように勤勉で品のある女性だそうだが‥‥外見に騙される方ではないしな?」


「ええ、俺も付け焼き刃など通じない方だと思います」


 騎士二人は早々に結論を出していたけれど、せっかく王都まで来てくれたのだし、もう少し様子を見てみようと思った。



 食事を終えて入浴を済ませた頃、邸に残っていたメイジーがノックをして部屋に入って来た。


「これから一週間は、若が戻られるまで私とルディが姫のお側に控えておりますね。その調整を済ませて参りました。ルディは廊下で警護しています‥‥ところで、あの者は頭痛がするとかで本日のレッスンは休むそうですよ」


「まあ、大丈夫かしら?」


 侍女のアルマが髪のお手入れをしてくれているので、鏡越しにメイジーを見たら、肩をすくめていた。気に入らないのね。



 夜になり、お兄様も戻られたため、寝室へ移動した。寒いので襟元の詰まった寝衣にガウンを羽織っている。室内へはメイジーが入り、廊下にルディが立っている。


 しばらくして廊下から女性の話し声がしたので、どうしたのかしらと顔を出してみた。

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