2-1 辺境伯領へ
お兄様が王都に行ってしまったので、私が魔法学園に入学するまでは辺境伯である祖父の城に身を寄せる事となった。私にとっても良い経験になるだろうからと祖父母が預かる旨を申し出てくれたのだ。
この国で辺境伯領は二つあり、お祖父様はカリス領に隣接した領地を治めている。
土地柄なのか、辺境伯領に在駐している国営騎士団は“力は正義”と言う風潮があり、私と共にお祖父様の元へ移ったメイジーが、その性別や繊細な外見だけが理由で辺境伯領の騎士達に揶揄される場面が多々あった。
具体的には「女のくせに騎士気取りか?」や「ご令嬢の護衛騎士は顔で選ばれるんじゃね?」等と聞こえるように嫌味を言われたりしたのだけれど、(お祖父様の許可を得ていたので)片っ端からメイジー自身が指導して回った結果、以降は彼女が通りかかると遠くからでも『フェアバンクス卿、お疲れ様です!』と敬礼する騎士が増えていった。
お兄様と共に王都へ移ったレオは、月初めの週末に馬を飛ばして私の様子を直接見に来てくれていた。
彼に関しても最初は辺境伯領の騎士達から軽視されているようだったけれど、彼等の鍛錬場に単身で乗り込んで、ちぎっては投げちぎっては投げしたところ(本人談)、仲良くして貰えるようになったらしい。
雨が降っても嵐になっても雪が降ってもレオは毎月会いに来てくれた。
そして、城に着くと一番に私の元へやって来て膝を折り挨拶するのだ。
その光景を見ていた辺境領の騎士の中から、私と“シュヴァリエの契り”を交わしたいと申し出る者が増えて来た。
レディが未成年の場合、本人に加えて保護者の承諾が必要で、現在はお祖父様がそれに当たる。
王都に居る両親やお兄様ともお手紙で連絡を取り協議した結果「メイジー若しくはレオから一本取れたらリーディア本人に伺いを立てる事ができる」となった。
希望者は若い騎士ばかりで最初は血気盛んに勝負を挑んでいたけれど、何度も敗戦しているうちに挑戦者も徐々に減って行った。




