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カリス公爵令嬢は幸せになりたい  作者: 成海さえ
第二部 魔法学園二年生(15〜16歳)
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番外編1 リーディアに恋愛対象として見られなかった人々の集い(32話の後)

 こんにちは、ルディ・ファウラーです。今はお嬢様がいらっしゃらないので、俺が実況させていただきますね。


 アスモデウスさんが帰られた後、俺達は使用人棟の食堂へ移動しました。ここにはカウンターも設置してあり、俺は中に入ってドリンクを作っています。カウンターには、使者様、王太子殿下と俺の先輩騎士お二人が座っていらっしゃいます。


「ディア姉様って、見た目がいいんだよ。まずは第一印象で、あっ可愛い!ってキュンとするね」


 ライムやレモンなどが入ったカクテル風柑橘系のジュースを飲みながら、王太子殿下が語っておられます。


「それに、清楚系の所作が完璧だから、守ってあげたくなるんだよね」

「分かります。俺が姫ちゃんに初めて会った時も、精霊のお姫様かと思いました。8歳の姫ちゃんも可愛かったなぁ」


 レオさんにはご希望があったので、丸氷を使ったオンザロックを出しています。


「それとさ、仲良くなると、目が合った時に微笑んでくれるんだよねぇ。あれは反則だな」

「ですよね、あれで落ちない人が居るのかって話ですよ」


 俺も何となく分かります。でも、お嬢様の魅力は外見だけではありませんけどね。


「ディランが囲う筈だよね。私も、婚約前に会えていたらなぁ‥‥」



「王太子殿下は姉上様のカミラ殿下もお好きなようですが、どちらとご結婚されたかったのですか?」

 前から疑問に思っていたことを聞いてみました。ルイス様はどちらの姫がよりお好きなのでしょう?


「私は、二人共と結婚したかったんだよ。二人同時に愛する自信があるからね」

「それは、女性側が嫌がるでしょう」


 甘くないカクテルを飲んでいるメイジーさんの意見はごもっともだと思います。


「二人を同時に追いかけていたから、二人とも得られなかったのかなぁ」

 王太子殿下は肩を落としてしまわれました。


「殿下は優しかったんですよ。名家の姫君達ですから、やろうと思えば勅令で何とでもなったでしょ?」

「姉様達の嫌がることはしたくないんだよ」


 レオさんの言葉に、王太子殿下はため息をついていらっしゃいます。



「使者様、どうぞ」

 使者様のカップが空になっていたので、新しいハーブティーをお出ししました。


「私にもお願いします」

 いつの間にか、使者様の隣にアスモデウスさんが座っていました。


「いや、何で居るの!?」

 王太子殿下が立ち上がります。さすが良いリアクションです。赤い瞳の悪魔は微笑みました。


「母屋には結界が張ってありましたが、こちらには無かったので、招待して頂いたのかと。ああ、これ以上人間の皆様が嫉妬しないように力は抑えておりますので、ご心配なく」


 突っ込みどころは何箇所かありましたが、ここは皆さん流す事にしたようです。

 俺もとりあえずこの方にハーブティーを出して様子を見ようと思います。


「一つ心配なんだけど」

 何事もなかったかのように、王太子殿下が話し始めました。


「このたびの事件で、精霊力のある人材の重要性が再認識された訳でしょう? フェアバンクス伯爵の血筋がとだえる事を、国王陛下が良しとしないと思うんだよねぇ」


 みんなの視線が、先輩お二人に集中します。


「王命となれば、断れないだろうな。契りを結んだ騎士は、結婚すればその関係を解消しなければならないし、私は同性だから免除されても、レオは終わりだな」


「えぇ、嫌だぁ‥‥俺は姫ちゃんに一生大好きって誓ってるのに」

 泣き真似をしているレオさんの背中を、王太子殿下がポンと叩いています。

「そうならないように、尽力してみるよ」


「悪魔に依頼してみてはいかがですか?」

 いきなりのアスモデウスさんの割り込みに、レオさんが苦笑します。


「いやぁ‥‥アルカナの騎士が、願いを叶える為に悪魔を呼び出すとか、なかなかのあれだと思うのですが‥‥ちなみに、意中の人と結ばれたいと言う依頼でしたら、報酬はどれくらい必要ですか?」


「そうですね、婚姻ではなくワンナイトでよろしければ、格安でお受け致しますよ」


「悪魔は愉快犯ですよ、おやめなさい」

 使者様が言葉を遮りました。


「ほんと、凄い誘惑ですね‥‥聞かなかった事にしよう」

 レオさんは自分の耳を手で塞いでいます。俺も心を無にしました。


「カミラ姉様、エストリアに嫁いで大丈夫かな‥‥」

 王太子殿下は心配そうです。


「あんなに皇太子殿下に気に入られていらっしゃるのに、愚問でしょう」


 アスモデウスさんが返答しました。と言う事は、安心していいみたいです。そうだ、今回のお礼も兼ねてまたベルさんに手紙を書いてみようかな。


 それでは、この辺りで失礼しますね。また機会があればお話しさせていただきます。

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