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カリス公爵令嬢は幸せになりたい  作者: 成海さえ
第二部 魔法学園二年生(15〜16歳)
114/172

II-35 卒業に向けて

 春休みになり、私は次の一年間で単位を全て取得するべくお兄様に効率的な授業の受け方を指導して貰っている。


「座学は3年で全て終わるからこのままでいいよ。もう一度受けたい授業があれば、空きがあれば受けられる。実技は卒業時にレベルの判定がされるだけだから、苦手なものを多く入れたらいいんじゃないかな」


 苦手と言えば、水と風以外の魔法と、短剣はそこそこ使えるようになったから、その代わりに治癒魔法をもっと学びたい。


 お兄様は私の隣で自分宛の手紙を読んでいる。お父様宛(開封済)のものも回って来るらしく、あの事件後のことも教えてくれた。


「水の中央精霊神殿長は、持病が悪化したので現役を退いてペンタクルス領の別荘で静養されるそうだよ。ペンタクルス大公が監視にあたるらしい」


 ご高齢だったし、そのままと言う訳にもいかないものね。そう言えば、宗教のトップ、総長も引退されるそうだ。事件の事後処理を終えてからのことになる。


「強硬派が襲撃された件はどうなったの?」


 アルカナで悪魔の事件が収まった後すぐにモンテネールにある強硬派の集会が襲撃された。もちろん我が国は関与を否定し、モンテネールの方で捜査が進められていたけれど、証拠がほぼ残っていないため難航しているらしい。


「証拠不十分で捜査は打ち切られるそうだよ」


 そうなのね、結局、あの刺客達も何も話さないまま亡くなってしまったし、この事件はここまでになりそうね。

 ちなみに、国家間の紛争に手を貸した例の悪魔は幽閉されたそうだ。しばらく出て来られないと聞いている(ベルの手紙より)。



 今日は、この後お兄様と変装して街の観光地へ遊びに行く予定だ。前髪で目を隠す作戦にしている。


「リーディア、どうかな? 隠れてる?」


 整髪剤が固まった頃に、お兄様のウイッグの前髪を触る。ちょうどいい感じに目が隠れているわ。風が吹いても大丈夫そう。


「ええ、これならカリス公爵子息だって分からないわ」


 お兄様は瞳と髪が特徴的なので、王宮内でも有名人だ。お仕事もできるし、爵位も外見も極上なので、目立つのよね。いい事なのだろうけれど、注目され過ぎてプライベートの時間を取り辛い。

 私も商家の娘に変装しており、本日はお供なしで外出の予定だ。


「準備できたら行こうか」

「ええ」


 小銭も用意している。乗合馬車を利用して観光地へ向かい、食事をして戻って来る計画を立てていた。私がもうすぐ17歳でお兄様が18歳だから、普通の学生同士のデートに見えるはず。



お疲れさまです、成海さえです。

台風10号心配ですね。

この物語も残り2話になりましたので、本日最後まで公開したいと思います。

番外編は二つご用意しているので、それは明日公開しますね。

読者様が無事に過ごせますように。

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