II-33 僕だけを見て
*注意* 多分大丈夫だと思いますが、今回は肌色が多いので、外で読まれている方は周りに注意されたほうが良いかもしれません。
「僕達も部屋に行こうか」
お兄様に促され、歩き出す。傍を見上げたら目が合った。いつもの綺麗な青い瞳が陰っている。これは私が招いたことだわ‥‥お兄様に微笑みかけ、覚悟を決めて寄り添った。
寝室に入ると、アルマはもう退出しており、部屋は既に整えられていた。暖炉に炎も入っている。まだ頬は熱かったけれど、お兄様の部屋着を広げて準備する。
「ディラン様、先に着替えます? それとも、沐浴にします?」
「リーディアと一緒に入りたいな」
いつもはそんな事を言わないのに‥‥頬を押さえながらお顔を見ると、抱きしめられた。
このドレスは背中が大きく開いているので、肩甲骨の下から首の辺りをゆっくり撫でられると、そこから熱が広がるように体が震えた。
上を向くと唇を塞がれる。
「ディラン様‥‥私、このまま近くにいるとあなたを襲ってしまうかもしれないわ」
息を吐きながら正直な気持ちを話したら、ふと笑われた。またキスされる。嫉妬はまだ続いているみたいだけれど、瞳に光が戻っていた。
「昨夜も告白されて嬉しかったけど、そう言う君も見てみたいな」
そのまま首の後ろのリボンを解かれたので、大人しくしていたら、隣の浴室に運ばれた。
「身体が冷たくなっているから、温まろう」
キスされているうちに下着もきれいに無くなり、お兄様がバスタブにお湯を張って、2人で中に入った。後ろから抱きしめられる。入浴剤を忘れない所がお兄様らしいわ。
「まだ頬が火照ってるね。あとどれくらいで治まるんだろう?」
あら、効果が切れるのを待っていたのね? と振り返ったら、彼は苦笑する。
「あの悪魔の影響でと思うと、悔しいんだ」
今はそうなのね、なかなか複雑だわ‥‥私も結構我慢しているの、お兄様も分かってると思うけれど。
「リーディアには僕だけを見て欲しいから」
「私はずっとディラン様だけよ」
「君はそうでも、周りが放っておかないからなぁ」
うーん、自分のことは調整できても、周りには制御不可能な人が多すぎるわ。
「もう学園も冬休みに入っているし、とりあえずこの年末年始は、なるべく2人きりで過ごしましょう?」
「そうだね、王宮もじきに休暇に入るから、父上と母上にご挨拶したら、またカリス領か辺境伯領へ行こうか?」
「そうね、王都に居たら、また何かありそうだわ」
お兄様は夏もゆっくり休めなかったから、冬はのんびりさせてあげたい。話しながら既に向かい合わせになってしまっている私の頬を、彼の手が撫でた。
「火照りが落ち着いて来たね。もう大丈夫?」
あら、そう言えば‥‥ドキドキはしているけれど、妙な高揚感は無くなっている。
「大丈夫‥‥みたい」
お兄様は嬉しそうに笑って私を抱き寄せた。肌が密着する。
「リーディア、愛してるよ」
「私も! 大好き」
私は彼と、やっと心からのキスができた。




