ゾンビを殺すために入社します。
2050年…突如として出現したゾンビ達によって、日本は支配され…かけた。その時の自衛隊が本州と他とを繋ぐ橋を全て封鎖することにより、一命を取り留めた。
…それから2950年後…西暦5000年。
ここは四国の愛媛県、今治市である。
今の日本の三大都市圏は福岡、北海道…そして愛媛だ。
愛媛は人口はそこまで大きくなかったが、2050年に関西から中国地方まで様々な人がゾンビの魔の手から逃げてきた。そのため、以前の四国は土地が有り余っていたものの、今では密集した住宅街に飢えるスラム街まで出来てしまっている。
そんな中、ある少年が街の中を走り待っていた。
「光輝!あんま街中走るなよ。」
家の二階から布団を干しているおばさんにそう言われていたのは高島光輝。18歳。彼女なし。
彼は今日、ある目的のために走っていた。
その目的とは眼前にある大きな建物。
ゾンビ対策組織"KILLER"
とデカデカに書かれている組織に今日入社する。
この組織は倍率は高くない。
せいぜい0.8程である。
何故なら"マトモに死ぬことができない"からだ。
この組織、ゾンビ対策組織"KILLER"はゾンビに奪われた、土地を取り返すため、毎日死と隣合わせの本州へ奪還を目指すという愛国心のある野郎か"イカれ野郎"かしか就かない職であるからである。
この光輝は前者。国を愛している。日本からゾンビを駆逐したい…そんな思いで建物まで走っていた。
彼はぜぇぜぇと息を上げながら建物の目の前まで着くと一言。
「デカっ。」
これが入社前最後の言葉だった。
建物は確かに大きかった…今まで見た建物の中で一番と言っていい程壮観であった。
彼は一歩また一歩と踏み出し、中へ入ってゆく。
中に入ると全員が起立した状態で止まっていた。
前をみると上官らしき人間がこちらを睨んでいる。
俺は流れに任せてキチンとした状態で起立する。
すると上官らしき女は俺の前まで音を立てながら寄ってくる。
そして、俺の目の前…当たるんじゃないかぐらいまで近付くと
「お前は遅刻だ。初日から舐めているのか?」
とイライラした様子で指摘してくる。
恐らく相当待ったんだろうな。足をカツカツと鳴らしている。
俺は素直にすみませんと謝ると女上官は溜め息を吐きながら許してくれた。
俺はホッと肩を下ろし、周りを見渡すと多種多様な人が前を向いている。剃り込みの入った入ったヤンキーに、知的な雰囲気を醸し出す眼鏡男子。オッパイのデカイロングのねーちゃん。巨体でゾンビを殺せそうなマッチョマン。
多種多様かよここは…心の中で突っ込みをする。
その間にも上官らしき女は説明をしている。
「私の名前は牧野咲だ。貴様らの上官となる。貴様らは今から本州と四国を繋ぐ連絡橋を渡り、本州のゾンビ対策施設に入って貰う。」
「と言っても何かをするのは向こうへ行ってからだ。本州の施設で基礎練習をした後に、前線へと行ってもらう。」
「では、貴様らは今から着いてくるように。」
そういい、リュックを背負って一人で向かっていった。
俺達は戸惑いながらも彼女についていく。
中の装置や人を見ているうちにバスの前まで着いていた。
どうやらこのバスに乗って行くらしい。
俺はバスに乗り込む…前に確かに見た。
こちらと目線を合わせる海の中にいる何かを。