表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/32

第12話 警察

登場人物

・富士つばめ…転校生、朝風興信所の職員

・すずらん…AIドローン

・朝風北斗…朝風興信所の所長

・因幡大宣…朝風興信所の職員


・赤羽まりも…同じクラスの娘、バトミントン部、行方不明

・神山えびの…同じクラスの娘、弓道部

・日高志麻…同じクラスの娘、写真部

・村山こがね…隣のクラスの娘、家庭科部部長

・出雲小町…隣のクラスの娘、バトミントン部、まりもの友達

・霧島遥香…バトミントン部、登校拒否

・三次…同じクラスの男子、サッカー部

・穂高江佐志…担任の男性教師、担当は英語、パソコン部顧問

・阿賀野…女性教師、担当は体育

・渡月…女性教師、担当は家庭科、家庭科部顧問

・小倉苗羽…男性教師、担当は化学

 車は、漆黒の山中を、ゆっくりと、事務所に向かって戻ってきている。


 夜空には、キラキラと星々が瞬いている。


「北斗さん、何があったんですか? 監禁だなんて」


 つばめの質問に、北斗は、まず、どこから話したもんかと、頭を掻いた。


 通学路を見張ると、確かに、つばめからの報告どおり、ダンプカーが何台も、県外から土砂を運んでいるのが確認できた。


ダンプカーのナンバーから、土建会社を探ったが、これは下請けで、何もわからなかった。

発注元を探ったが、これも、ごく普通の産廃業者だった。


 そこで、ダンプカーを追跡し、廃棄先を調べてみた。

これが、大当たりだった。


 廃棄先の土地は、『ムーンライト地所』という、不動産会社の所有となっていた。


 この会社自体は、ペーパーカンパニーで、米代(よねしろ)という人物が、社長として登録されていた。

この米代という人物を調べると、出るわ出るわ、暴力沙汰、産廃の違法投棄、恫喝などなど。

死者まででているのに、全てが種類送検で済まされていた。


「どうして、実刑にならないんですか?」


 つばめの質問は、極めて当然のものだっただろう。

理由はいくつもあるのだろうが、一番大きいのは、利益の一部を、政治献金していることだろう。

それと、裁判官も買収した痕跡がある。

表向きでは、裁判官は、清廉潔白ということになっている。

だが、そんなのは表向きで、原告と被告の、社会的地位の比較や、弁護士費用の大小、袖の下の大小で、判決が下されるという事が、横行しているのである。


「でも、人が亡くなっているんですよね?」


 つばめの問いに、後部座席でぐったりしている北斗は、少し渋い顔をした。

警察も簡単に手を出せないような、マスコミが支援している市民団体に、社長の米代という男は、所属してることがわかっている。

そういう団体は、年々増えていっている。

そして、そういう団体が、やりたい放題して、最後は、市民に犠牲が出る。


 政治家としても、一票を入れる、顔も知らない一般市民よりは、金をくれる、顔の見える、そういう市民を相手するというものであろう。

問題が発生しても、ド近眼のマスコミは、現職だけしか叩かないのだし。


 逆に、そうした市民を無視したら、今度はマスコミに叩かれることになる。

叩いて埃の出ない人などいないわけで。

例え、叩かれるいわれのない人だとしても、『疑惑』といって、極悪人にしたてあげられる。

ならば、一般市民など無視して、そうした市民を優先するというものだろう。


 これが、今、この国が抱えている、静かな病巣なのだと、北斗は説明した。



 話が脱線してしまったなと言って、北斗は苦笑いした。


 そこまでわかったところで、今度は、盛土の調査に入っていた。

そこで、やつらに出くわした。


 表向きは、バードウォッチングということにしていた。

そのためのカメラと、双眼鏡を首から下げ、ハンチング帽を被り、恰好だけは、そう見えるようにしていた。

だが、どうやら、彼らからは、そうは見えなかったらしい。


 最初はどうやら、車に細工をしようとしたらしい。

だが、すずらんからの警報で、それに気付き、すぐに車に戻った。


 何をしているのか尋ねると、背後から襲われ、スタンガンを撃たれた。

その後の事は、よくはわからない。


 気が付いたら、手足を結束バンドで縛られ、小さな小屋に監禁されていた。




 興信所に戻ると、つばめは、すぐに救急箱を取り出し、北斗の手当を行った。


 その間、すずらんは、北斗の乗っていた車を、自動操縦で走らせ、興信所まで戻した。

体力切れで、失神しそうと、何度も泣き言を言っている。


 北斗は、背骨付近にスタンガンのものと思われる、特徴的な赤い火傷を負っていた。

さらに、右足ふくらはぎにも、スタンガンの痕があった。


 恐らく、逃走を困難にするためだろう。


 腹部と背中に、強く蹴られたと思しき、打撲痕もあった。

顔にも、殴られた痣ができていた。


「足は、すぐに治りそうかな?」


 そう言われても、つばめも、スタンガンの知識が乏しく、よくわからなかった。


 大宣の説明によると、本来、スタンガンの効果は、数分が限界らしい。

ようは、超強力な静電気放電のようなもの。


 ただ、昨今、構造の簡単なスタンガンは、改造が横行しているらしい。

出力を上げていたり、長時間当て続けられると、かなり後遺症が残ることになる。


 少なくとも、未だに足に自由が効かないとなると、改造を疑った方が良い。

そうなると、数日回復しないかもしれないし、もしかしたら、筋繊維が切れているかもしれず、医者にかかった方が良いかもしれないのだそうだ。


「土壌調査なら、どこかで、すずらんに、夜、採取とスキャンに行かせましょう」


 大宣は、充電中のすずらんを撫でながら、北斗に進言した。


 だが、北斗は、しばらくは、それどころではなくなるかもしれないと言った。

向こうは、当然、こちらを知った。

恐らくは、これからしばらく、捜査妨害がされるだろう。


「あの土砂の山が、クロだということはわかったから、今はそれでいいよ。かなり長期間にかけて、運び込まれ続けた違法廃棄物だ。簡単に証拠隠滅なんて、できやしないんだから」




 翌日は土曜で、学校は半日だけ。


 学校から帰ると、興信所前に、一台の車が止まっていた。


 注意深く車内を確認すると、何やら無線機と思しき、箱状の通信機が搭載されていた。

もしかしてと、車の後方を見ると、明らかに不自然な、大きな無線アンテナが付いている。


 警察車両である。


 嫌な予感を覚えたつばめは、興信所に寄らず、真っ直ぐ自分の部屋へと向かった。

制服から私服に着替え、かなり慎重に、興信所の裏口から、休憩室に入った。


 休憩室に入ると、興信所の中の会話が聞こえてきた。


「朝風さん。何度も言いますがね。彼らは、何者かの襲撃を受けたと、訴えてきているんですよ」


 どうやら、警官は二名いるらしい。


 北斗は、何を言っているのか、全然わからないと二人の警官に言っている。

だが、もう一人の警官が、現場に、朝風さんの物が残されていたというのは、どう説明する気なのかと、問いただしてきた。


「何度も説明しますがね。バードウォッチングに行っただけですよ」


 じゃあ、なんで、襲撃現場に、あんたの物があったんだ。

あんたの名前の入った、医者の診察券が現場に落ちていたんだよと、警官は、証拠写真を見せた。

被害者も、あんただと、はっきりと名前も言ってるんだよ!

警官は、机をパンと叩いた。


「え? 北斗さん、昨日、山で滑落して、怪我したって言ってませんでした?」


 つばめが、人数分のコーヒーを淹れて、事務室に持ってきた。

北斗は、すまないねと言って、コーヒーを受け取り、飲みだした。


 二人の警官にも渡し、大宣にも渡すと、お盆を、北斗の執務机に置き、自分も北斗の隣に座って、コーヒーを飲んだ。


「私も、そう説明しているんだがね、署に来いの一点張りでねえ」


 北斗は、ちらりと警官を一瞥すると、ぶすっとした顔で、小さく息を吐いた。


 どうやら、目の前の警官たちは、北斗が、山奥の事務室を襲撃して、土建屋の社員を怪我させたと、言い張っているらしい。

そんなことをする、動機がないだろうと言っているのだが、それも署で、じっくりと聞きたいと言っているのだそうだ。


 ……意味がわからんない。

つばめが首を傾げると、北斗は、わざわざ、警官の方を見て、やれやれという仕草をした。


「そんなの、悪魔の証明じゃないですか。被害者って、怪我してるんですか?」


 被害者とかいうやつらは、被害届を出したのだそうだ。

北斗が銃を撃って、怪我をさせたと、診断書まで持ってきたらしい。


 それを聞くと、つばめは、きゃははと、警官を馬鹿にするような、煽り笑いをした。


「探偵だから、銃を撃ったって。どんな漫画読んできたんですか。警察って、漫画のネタで、市民を逮捕しようとしちゃうんですか。最低」


 つばめの、神経を逆撫でするような、女子高生の演技に、大宣は、思わず噴き出した。


 警官二人は、馬鹿にされたと憤り、怒りで顔が赤くなってきた。

飲んでいたカップを、机に置いたのだが、怒りで力が入っていたようで、取っ手が折れた。


「器物破損ですよね? それ?」


 つばめの指摘に、警官は、ぶすっとした顔で、弁償すれば良いんだろ、いくらだ?と言った。

その言葉に、つばめは、はあ?と、さらに神経を逆撫でするような声を発した。


「器物破損だって言ってるじゃないですか。ちゃんと、『警察官』に申告しているんですから、手続き取ってくださいよ」


 つばめが、警官に詰め寄ると、警官も、立ち上がり、怒りに震え、真っ赤な顔で、つばめを睨んだ。


「うわあ、怖ぁい。今度は、恫喝ですか? 精神的苦痛を受けましたって、弁護士に相談しますよ?」


 警官が、腰の警棒に、手を掛けたのが見えた大宣は、つばめの肩を掴んで、警官から引き剥がした。


 破片で、自分で指を切って、公務執行妨害と言ってくるかもしれんぞと、警官に聞こえるように、半笑いで、つばめに言った。


 北斗は、椅子に座っている、もう一人の警官を、じっとりとした目で見ていた。


 椅子に座った警官は、そのやり取りに、少し冷静になったらしく、もう一人の警官に、少し落ち着けと言って、椅子に座るように促した。


「銃で撃ったっていうなら、硝煙反応とかいうの、出るんでしょ。警察署に行って、調べてもらったら良いんじゃないですか」


 しばらくずっと黙っていた北斗は、つばめの言う通りかもしれんと言って、パンと手を叩いた。

何も出なかったら、馴染みの記者に、ここまでの話を、タレこんでやろう。

警察の横暴が極まっていると言って。


 北斗は、椅子から立ち上がると、携帯電話を取り出し、どこかに連絡を入れた。

よろしければ、下の☆で応援いただけると、嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ