健斗
健斗は自分の教育実習が尻すぼみで終わった事を樹理に話した。
評価も芳しい物では無かった。そうだろう…最初は指導も生徒達との信頼関係も良好だったのが、信頼を失い回復出来ないまま終わったのだから…。
樹理は健斗の手を握り、
「この評価になる事が分かっていても、いじめられていた生徒さんを助けた事に後悔してないんじゃない? 」
樹理の目は貴方は私の誇りと言って居る様だった。
思いを樹理に理解されて健斗は張り詰めた様な『1人での戦い』の思いの荷を下ろし、樹理を抱きしめた。
「分かってくれてありがとう」
「分からない訳無いじゃない」
樹理も健斗の背中に手を回した。そして時を忘れて過ごした。
お互い愛しさを大切に優しく、暖かく、身体を通わせた。
今迄樹理を汚してしまいそうな恐れを、樹理がずっと深く理解し続けて溶かしてくれた気がした。
行為の後も樹理の優しい笑顔は同じだった。陰りの無い、健斗を信頼し切った笑顔。樹理は変わらず側に居て健斗の頬を突いて笑って居る。
「ずっと僕の側に居てくれる?消えたりし無い? 」
「消えないわよ。ずっと健斗の側に居るよ。どうしたの? 」
樹理が愛おしくて堪らず、抱きしめた。樹理も健斗を抱きしめて健斗の背中を優しく撫でた。
数日後、健斗は思った。あの後省吾はどうして居るのだろう…。教師達は助ける手立てを考えてるのか…実行に移したのだろうか…。
いや、動いてないだろう…。省吾がひたすら虐めに耐えて居る事を良い事に、対応せず目を瞑って居るのだろう。だから僕があの時助けても、空振りに終わったんだ。
もしすでに指導に入って居たら、虐めはエスカレートしなかっただろうに。
だから僕がグラウンドにいた時に、教師の姿は1人もあの場所に居なかったんだ。
僕が罪を犯した時の校長達を見ている様だ。




