健斗
小さい町の中で町長の疑惑と一馬の逮捕は大きな噂となり、多くの町民がその話題で持ちきりの数日を過ごしていた。
その中で健斗の父と母も、町長と一馬の話題を話す事が多かった。
夕食時、
「ちょっとあなた、藍香ちゃん覚えてる? 」
「あぁ、勿論」
2人の会話に藍香の名前が飛び込み、健斗はビクッと古傷が痛む思いを感じた。そして味噌汁をすすりながらシッカリと聞き耳をたてた。
「藍香ちゃん、引っ越してったの一馬君に襲われたかららしいよ。その時の日記帳があるから被害届け出すみたい。派出所の奥さんが言ってたの」
「そうだったんだ…。当時噂になってたけど…本当だったんだな。あの頃中学生だったろ、可哀想になあ」
健斗はその話を聞いて怯えた。この恐怖を両親に悟られない様に、自然を作ろうと身体は普通と言う鎧を被った。
日記帳がある…なら僕の名前も出てくるだろう…。僕も訴えられるのか…。
一馬と同じく罪人になると言う事か…。一馬は懲りもせず好き勝手していたんだ。僕は悔いたんだ。一馬とは違うんだ!
健斗は食事を残して部屋に戻った。
「あら、食欲ないの? 」
と話しかけた母の言葉に答える事も忘れていた。
そして有紗にあの事がバレた時の様に、枕に顔を押しつけて恐れ慄いた。頭の中を、逃げる術を巡らしたり、今後の事を予測をしたり、多くの思いが駆け巡った。
樹理との大切な関係、勉強に励んで居る高校生活、当たり前に思っていた順調な生活が消えるのでは…樹理の両親にも信頼を得れたのに…。全てが消える…。
怯える心が止まらない…。対策や何かの術は結局全く思いつかない…。思い付かないどころか 術など何も無かった。
流れに身を委ねるしかない…。何処に辿り着くのか…。紅葉の落ち葉を思い出し流される自分に不安を思い、頭を抱えた。
結局僕は一馬の共謀者…つまり罪人なんだ…。




