健斗
一馬や諒我と疎遠になった後、あまり娯楽が無いこの田舎町の中で僕は勉強にしか逃げ場が無かった。
学校でも外出しても、有紗と会うのが怖かったのだ。勉強をしていれば、学ぶ内容のお陰で藍香と有紗の事と、自分の罪を思い浮かべずに済んだ。勉強に逃げれば逃げる程成績は上がった。両親は何も知らずに
「何か将来やりたい事あるのか? 」
と聞いて来た。返事に困った。
「来年度は受験生だから」
とだけ答えた。
学校では、有紗と目が合う事が有れば向こうが目をそらした。そして拳を握っているのが見える…。学校は気を許す事が出来ず、茨の様に感じて楽しめなかった。
だからこそ勉強に打ち込んだ。休み時間も有紗の目線を感じない様に勉強した。とにかく一日中、毎日、僕は逃げていた。
一馬は、隣町のゲームセンターに通う事が増えたらしい。放課後、休みの日はゲームセンターに入り浸って居たと、クラスメイトが話していたのを小耳にした。
諒我は大人しい男子の広田颯斗と一緒にいる事が増えた。
諒我があまり興味無かったアニメの話題を颯斗から聞いて過ごしていた。
僕ら3人は自分達の犯した罪から只々避けて暮らして居たのだ。償う事なく…世間の知る所とならない様にと願い、それとなく生きて居た。
皮肉にも成績が上がった僕は、注目を浴びて職員室に呼び出され進路のアドバイスを受ける事が増えた。クラスメイトから
「さすが健斗だなぁ、何処の高校行こうとしてるのかなぁ」
と噂にもなった。人目を避けたかった。いや、人目が怖くて仕方なかったのに、勉強に逃げて居た事が仇となり成績が僕に対する注目の種となってしまった。その注目が、いつか僕の罪が露呈された時を想像させる。明るみに事実が出たら…自分の無様さと、父と母の落胆と、世間の目がグサグサと刺さってくるだろう…。その中で僕はどう暮らすのだろうか…。思うだけで怖くなる。そして勉強に逃げる毎日。他に何か逃げ道は無いだろうか…。でも代わりに打ち込む事も見出せず、更に勉強に逃げた。
3年生になり、修学旅行の時期になった。誰と同じ班になりたい…自由行動は何処に行きたいか等もうどうでも良かった。
所属する班に一馬と諒我がいない事だけを望んだ。
そしていざ修学旅行が始まると、返って勉強に逃げる事は出来ず、クラスメイトと数日共に過ごさなければいけない。修学旅行はただの苦痛の数日となった。旅の写メ画像には僕の作り笑いが写って居た。
宿の夜はクラスメイトの好きな女子の話や、付き合ってる女子の話になった。
僕は寝たふりをして話に参加しなかった。皆んなの浮かれた恋の話が、僕の罪を犯した時の映像を蘇らせてグサグサと突き刺さってくる…。これが罰なのか…。罪悪感に眠れず、ただ長い時間寝たふりをする…。苦痛な夜だった。




