健斗
僕は毒されて居たんだ…。諒我や一馬と一緒に何も罪悪感無くいつも通り過ごして居たり藍香が学校に来れないのも好都合とさえ思って居た。そして今藍香がどんな無様な姿になっているのだろうと興味を持った。
花火大会の帰り道だった。藍香の事を探ってやろうとコッソリと足音を立てずに藍香の家に近づき死角に潜み、聞き耳を立てた。藍香の部屋であろう窓が開いていてカーテンが風でフワフワ揺れると、灯がボンヤリ見えた。藍香の悲痛な嗚咽と母の宥める声が聞こえて来て、興味に掻き立てられた。
「心配無いわ。ママが側に居るからね。大丈夫よ」
健康的ではにかみながら笑う藍香とは程遠い苦しげな嗚咽…。僕は残酷にも
「藍香も堕ちたな」
と心の中で囁いてほくそ笑んで居た。陥れたのが自分でもあるにもかかわらず。悲しげな親子の様子が滑稽でたまらなかった。悲しませたのは自分であるのが、尚更優越感と好奇心を掻き立てた。そして更に耳を澄ました、
藍香の母が
「ここにいるのも後数日。引っ越したら怖いものが無くなるから。大丈夫よ」
と言うのが聞こえて藍香一家が引っ越すのを知った。
その時の僕は獣だった。
「引っ越すのか!確かにここに居られ無いだろうな。無力な中で後ろ指刺されてるのだから逃げ場を探し始めたのだろう。この一家が居なくなれば、藍香を襲ったのが僕らだとの事実が明るみに出る事は絶対的に無くなる…」
と心の中でガッツポーズをした。そして僕は更に思った。
「以前は確かに藍香を好きだったけど、こんな落ちぶれた女。こっちから願い下げだ」
と。
実に興味深いショータイムだったと言わんばかりに、勝者にでもなった気分の僕は帰り道に口笛を吹いた。




