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彷徨う羊と、傷を負った羊
この物語は ノベルデイズに重複投稿している物です。
外田健斗
この田舎町の成人式の会場に坂橋藍香の姿は無い…。
スポーツが好きでスラっとした藍香の晴着姿は、きっと美しい事だろう…。
きっと僕の知らない何処かで晴着に負けない華やかな笑顔で、成人式に参加しているに違いない。
この町を彼女にとって故郷とは程遠い『悍ましくて決して近寄る事など出来ない、思い出すだけで身震いする町』にしたのは僕だ…。僕が14歳の時に友人達との悪ふざけで、彼女を苦しめた。そして酷い傷を負わせて、彼女と彼女の家族を苦しめ、不信感の渦に陥れて…。
藍香の幸せを今ここで祈っても許して貰えないだろう…。
僕は…決して…藍香と藍香の家族に償う事は出来ない…。