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5話。魔石とかの話と友人

「【急募。武蔵村山異界の魔石。単価3割増しにて買取!】ねぇ」


無意識に県外を除外していたな。

これを見つけてくれた神様様々である。


『そうじゃろそうじゃろ』


どや顔している神様には後でお礼をするとして。


「依頼主は国防省の技術開発局で、武蔵村山異界の深度は2」


悪くない。県外とはいえ場所的にも武蔵村山はここ入間市の隣なので、それほど遠いわけではない。


しかも求められている素材は一番ポピュラーな【魔石】だから計算も簡単。


単価も高い。基本的に深度2の異界で得られる【魔石】は一つ5000円~10000円くらいなので、その3割増しとなれば、6500円~13000円だ。


魔石の重さは大きいのでも一つにつき500グラム前後なので、今の俺なら一度で10~20個は回収できる。


つまり一回で15万円超えを狙える。


依頼主もはっきりしているので、報酬が値切られたり支払いが滞ることもなさそうだ。


総じてかなり良い依頼に分類されるだろう。


問題はなんでこんな『かなり良い依頼』が向こうで消化されずに入間の協会に貼り出されているのかってことなんだけど?


「どうしてこの依頼がこっちに流れてきたんです?」


気になったら知っている人(協会の職員さん)に聞いてみる。

それが一番大事。


『聞くは一時の恥。聞かぬは即ち死、じゃからな』


殺伐しすぎ。でも間違ってはいない。


この業界では異界に関してだけでなく、全体的に無知=死なのは常識なのだ。


「えっとですね。この武蔵村山異界は深度2の中でも強力な妖魔が出ることで知られていますので、率直に言ってあまり人気がないんです」


「あ~なるほど」


基本的に、深度2の異界を構築している妖魔のレベルは神様基準で10~15である。


当然、レベル10の妖魔が創る異界と、レベル15の妖魔が創るそれは、危険度も得られる素材の質も違う。


この様子だと、武蔵村山第二異界とやらの主はレベル15近くの妖魔なのだろう。


深度2を稼ぎ場としている退魔士にとってはギリギリのラインだし、深度3以上を稼ぎ場にしている退魔士にとっては得られる報酬が安い。


そこそこ質の良い【魔石】を欲しがる企業や組織が多いからか異界そのものは討伐対象になっていないのだろうが、リスクとリターンが釣り合っていないので異界そのものに人気がない。


なら軍の実働部隊を向かわせれば良いと思うかもしれないが、実働部隊は全国各地の異界に展開していて余裕が無いし、なによりあそこは部署ごとで予算の引っ張り合いをしているので、他の部署に貸し借りを作りたがらない。


そのためこうして半官半民組織である協会に依頼がくるわけだ。

ここに依頼する分には税金を使っても怒られないからな。


『協会が得ておる手数料も、原資が税金の場合は結果的に上層部で中抜きしとるようなもんじゃしな』


そう考えるとこういった依頼も、協会という天下り先が先細らないように定期的に仕事を出していると言えなくもないかもしれないな。


『ややこしい言い草じゃのぉ』


奥ゆかしいと言って欲しい。


『どっちでもええわ』


それについては同感。


まぁなんにせよこの依頼がここに来た理由が、リスクとリターンのバランスが取れていないせいというのであれば、俺にとっては『おいしい依頼』であることが確定したわけだ。


何せ今の俺のレベル的なアレは神様曰く55相当。


本来であれば深度4や5に潜っていてもおかしくないレベルである。

生まれる前から神様が憑いているのは伊達ではない。


そんな感じなので、高くてもレベル15相当の妖魔に後れを取る可能性は極めて低い。


『極めて低いっつーか、深度2程度ならば油断しようが慢心しようが掠り傷一つ負わんよ。警戒するとしたら石かなにかに蹴躓いて足を捻ることくらいじゃろうて』


そういうことらしい。


問題も障害もないのであれば依頼を受けるべきだろう。


この依頼は所謂常設の依頼ではないので、依頼を受ける旨を受付に伝えた上で、受注書を発行してもらう必要がある。


これがないとたとえ武蔵村山ダンジョンで回収した【魔石】であっても割り増しで買い取ってもらえない、もしくは安く買い叩かれてしまうので注意が必要だ。


『嫌な、事件じゃったのぉ』


あのときの俺は若かった。


無知とは罪、知とはすなわち力。

基本は大事。ルールは守れ。


退魔士とか関係なく、社会人としての常識である。


「お、いたいた! お嬢、見つけたよ! にしおー! 異界に行こうぜー!」


「……」


『面倒なのに見つかったのぉ』


「あれ? にーしーおー! 聞こえてるだろー?」


公共の場で大声を出してはいけない。


「にーしーおー!」


ましてやその大声で人の名前を呼んではいけない。


社会人としての常識である。


閲覧ありがとうございました

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