表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/82

3話。【悲報?】どうやら俺は監視されることになったらしい【残当?】

この小説はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係がありません

監視、監視ときたか。


『これまでの経緯からすれば、お主が国の監視対象になるのは当然のことじゃろ』


えぇ。そうですね。


神様が言うように、国が色々とやらかしている俺を監視対象にするというのはある意味当たり前のことなので、そこに不満はない。


監視されることに不満はないが、その方法と監視を宣言してきた彼女の所属に不満がある。


普通に考えて、監視役と監視対象の距離が近すぎるだろうが。


先輩らしき人にいきなり「君を監視します!」とか言われても、なんだ。その。困る。


その昔、ヒイロ・グリーンリバー=サンから面と向かって「お前を殺す」宣言をされたお嬢様はこんな気持ちだったのだろうか。


『つってもまぁ、お主は術式で監視できないからの。人の目でやるしかないってのは向こうとしても不本意極まりないことじゃと思うぞ』


そりゃね。普通なら数十人を纏めて監視しているであろう状況で、俺の監視をするためだけに何人か使うことになりますからね。効率を無視した行いであることは確かだし、効率を最重要視する軍の人間からすれば不本意なのも理解できる。


だからって正面から監視します宣言するのはどうかと思うが。


『隠れて監視しても良いんじゃろうが、それがバレた際の報復を恐れたんじゃな』


それもありますか。俺としては監視がしたいなら隠れてやってくれと言いたいところですが、コソコソされるのを嫌う人もいますからね。


『ましてお主相手の場合、コソコソしとったら喰われるからのぉ。妾に』


コソコソやれという俺の気持ちを優先したら死ぬんですね。

なんて難易度の高いミッションだ。


尤も、その場合でも神様が悪いってことはないので、向こうが悪いことになるのだが。


『そう言えば、以前教会関係者を喰らってから、何度か社に侵入を試みた連中がおったわ。その中に軍の連中もいたのかもしれんな』


なるほど。教会のコマンド部隊がウチに向かったあと消息不明になっていることを知れば、調査の一つも入りますか。そして調査に送った人員が一人も帰ってこない、と。


向こうからしてみたら軽くホラーですね。


『巣穴に侵入されたら呑み込まねば無作法というもの』


不法侵入はいけない。(戒め)


『その反面、正面から来た連中は無傷で返しておる』


うん。どんな思惑があろうとルールを守って参拝している人はお客さんだからね。

お客さんは神様……ではないが、貴重な収入源なので害することはないのである。


だから向こうはこう考えたのだろう。

「隠れたらアウト。正面から接触するしかない」と。


『で、正面から接触するのであれば裏表がない人間の方が良いと考えたわけじゃ』


「?」


うん。この人、見るからに裏表無さそうですもんねぇ。


いや、人間である以上裏表が全くないなんてことはないのだが、少なくとも彼女が自発的に陰謀を目論むことはないだろうという印象を抱いてしまった。これが擬態だとしたら大したもんだと思う。


『擬態ではなかろうな。こやつはあくまで兵士、あくまで駒じゃ。妾もお主も駒に悪意を抱くほど狭量ではない。向こうの上役はそこを見抜いたのじゃろうて』


道具は使い手次第ですからね。末端の兵士を潰しても意味がない。


器の大きさ云々ではなく、俺がそういう価値観を持っていることを見抜かれたか。


まぁ、実際のところ俺が彼女を許容するかどうかも一種の賭けのような気もするが……とりあえず向こうが色々考えた結果、彼女が送り込まれて来たのは理解した。


では次の問題。彼女が所属する組織についてである。


彼女に俺の監視を命じたのは恐らく、というかほぼ確実に軍なのだが、ここで問題になるのが彼女の所属している宗教組織の存在だ。


現在日本に存在する宗教組織は、大きく分けて【神道系】【仏教系】【教会系】【陰陽道系】の4つに分類される。


イスラム教とかヒンドゥー教とかゾロアスター教はこの国ではマイノリティーなので、信奉している人はいるのだろうが、政治的な発言力は無いと思っていい。


そして上記の4つの宗教はそれぞれ内部で宗派が分かれている。


例えば神道系の中には天津神を祀る一派と国津神を祀る一派がある。


仏教には天台宗だの浄土真宗だの真言宗だの禅宗だのと言った宗派がある。


ちなみに裏高野で有名な密教は、空海が興したとされる真言宗系の宗派がモデルとなっている。ただし最澄が興した天台宗系の密教もあるので、密教と聞いて「あぁ、裏高野ね」と知ったかぶりをしてはいけない。


『ユン・ピョウ・トン・ペイ・シュウ・イチ・オ・ガタ・ケン!』


一人だけ吹き替えの人がいるような?


教会はカトリックだのプロテスタントだの東方正教会だのと言ったメジャーどころから、地域に根差した結果色々混ざったものがある。隠れキリシタンなんかの系統も教会の一派として分類されている。


陰陽道は専門外なので良くわからないのだが、土御門系列と芦屋系列があるらしい。早苗さん曰く宮内庁直轄でそれぞれが東京と京都の皇居を守護しているそうな。


かなり簡略化したが、以上が国内にある大きな宗教組織の内訳となる。


で、この宗教組織たち。各宗派の仲も悪いが、それに輪をかけて組織間の仲がすこぶる悪い。

なんなら些細なすれ違いが普通に殺し合いに発展するくらい仲が悪い。

ついでに言うと、日々暗闘が繰り広げられている程度には仲が悪い。


『宗教家にとって最大の敵は、時の権力者ではなく他の宗教家じゃからの』


そういうことだ。


だからそういう垣根を無視した組織である協会が必要になったとも言えるのだが、それについては今はいいだろう。


これらを踏まえた上で俺の立場はどうなのかというと、ウチは神道国津神系列の神社となっているので、そこの長男である俺も自然とこの派閥に所属することになる。


『妾は別に国津神でも天津神でもないんじゃがな』


そう嘯く神様曰く、彼女は彼らよりももっと前から居たらしい。


なんでも向こうから不可侵条約を打診してきたので、自分の縄張りを荒さないのであればそれでいいやと放置していたら、いつの間にか国津神の一柱として扱われていたとかなんとか。


実態はともかくとして、神道的価値観では土着神の多くは国津神に分類される傾向がある。

そのため、彼女も国津神として伝承されていたというわけだ。


経緯はともかくとして、結果として神様は国津神扱いされているため、その彼女を祀っている我が西尾家や、同じ神様を祀っている中津原家は国津神系の家となるのである。


ちなみに鷹白家も国津神系だが、向こうはその名の通り白い鷹を神格化して祀ったのを切っ掛けとしてできた家なので、ウチの神様とは一切関係ない。


閑話休題


結局のところ俺が何を言いたいのかと言えば、俺を監視すると宣言した彼女が所属する宗教組織によっては、中津原家を中心とした国津神系の一派と彼女が所属する一派との間で宗教的な争いに発展する可能性があるということだ。


下らないと思うかもしれないが、神様が実在するこの世界に於いて宗派とは結構な大問題なのである。


「えっと、先輩?」


「あぁ、まだ名乗っていなかったな。私は……ンンッ! 私はッ2年1組の東根(ひがしね)咲良(さくら)だッ!」


『こやつ、実は無理して「ッ」をつけているのでは? 妾は訝しんだ』


あまりにも「ッ」が多いですからね。実は俺もそう思っていましたけど、先に確認しないといけないことがあるので今は触れないであげましょう。


「東根先輩ですか。私のことは既にご存知のようなので自己紹介は省かせてもらいます」


「うむっ!」


「単刀直入にお聞きします、東根先輩が所属する宗教組織はどこになりますか? それによっては先輩からの監視を受け入れるわけにはいきませんので、正直にお答え願います」


とは言っても、ここで嘘を吐く意味はないのだが。一応な。


「神社の息子である君がそこを気にするのは当然だなッ! だが安心して欲しいッ! 私は特定の宗教組織に所属していないッ!」


「はい?」


「神社の息子である君がそこを気にするのは当然だなッ! だが安心して欲しいッ! 私は特定の宗教組織に所属していないッ!」


「いや、聞こえなかったわけではないです」


『大事な事なので二度、ではなく、単純にお主が聞き返したと判断したようじゃな』


これは天然? それとも計算? と首を捻っている神様が、重要なのはそこではない。


「東根先輩は今、ご自身が宗教組織に所属していない、そうおっしゃいましたね?」


「うむッ!」


何故か自信満々でドヤ顔をかましている東根先輩を前にして、俺は内心で頭を抱えることしかできなかった。


まじかー。まじなのかー。


恐らくだが彼女は、彼女を俺の下に送り込んできた上司の思惑を理解していないのだろう。


そうでなければここまで堂々としていられるわけがない。


『これは、荒れるぞ』


そう言いながらどことなくワクワクしているように見える神様。


だが神様の言葉は何ら間違っていない。


だって彼女は、東根先輩は、軍が俺に差し出してきた生贄(エサ)なのだから。

この世界、どれだけ生贄が好きなのか……


閲覧ありがとうございました。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ