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3話。仕事へいこう

経緯はどうあれ生まれてきた以上、生きねばならぬ。


親としても、産んだ以上は育てねばならぬ。


だが、育児とは簡単なものではない。


肉体的、精神的な負担もさることながら、何をするにしても先立つものが必要なのだ。


端的に言えば金である。


我が家の場合はそれが不足していた。


前にも言ったが我が家は神社である。故に父の職業は神主となる。だがこのご時世、神主一本で食っていくのは難しい。というか無理だ。


それが大都市にある有名な神社ではなく、都心からやや外れた地方都市からさらに離れた町にポツンとあるしがない神社であれば尚更。


地元の人間でさえ新年のお参りは少し離れたところにある大きな神社に行くとなれば、もはや収入源は無いに等しい。


一応歴史だけはあるので神社庁から補助金が出たり、地元のお祭りの際には多少のお金が入ってくるらしいがそれで一家4人が暮らしていけるかと問われれば、答えはNOと言わざるを得ない。


かといって社会的地位だけはある神社の神主がそこらへんでアルバイトをするわけにもいかないわけで。


雇う方も気を使うからな。


なので少し前まで我が家の収入は、少量のお布施と神社庁からの補助金。さらには父親の弟妹、はたまた母親の実家から送られてくる仕送りがメイン収入となっていた。


さすがにそれだけに頼るのは良くないからと母親がパートに出ていたものの、それとて月数万円程度。


それに意味が無いとは言わないが、進学など将来的なことを考えれば余裕がないというのが実情だ。


ちなみに我が家の家族構成は、父と母。それに俺と妹の四人家族である。


俺が14歳で妹が12歳だ。


家計が苦しいのに世継ぎ以外の子供をこさえるとは何事かと思わなくもないが、これには切実な事情がある。


といっても簡単なことなのだが、通常ウチのような家の場合、長男である俺が家を継ぐことはほぼ確定している。


伝統だけはあるので、継がないという選択肢は無いのだから当然だ。


しかし神社の神主だけではまともに生活できないことは説明した通り。


よって弟や妹のように、家を継がずに済んだ者が他の家に嫁ぐなり婿養子として入るなりして神社業以外の稼ぎを見つけ、家を継いだ者に援助をする必要があるのだ。


言ってしまえば家族ぐるみのヒモである。


こんなの普通のお家であれば家族総出で邪魔者扱いされそうなものだが、ウチの場合そうはなっていない。


それというのも、ウチは神社にありがちな、歴史だけはある由緒正しき家柄だからだ。


代々積み重ねてきたその歴史は年数にして驚きの800年と少し。


そりゃ800年も続けば、その存在そのものが格となる。そして『格』を欲する人たちにとってこの由緒正しさは稀少なものに映るらしい。


なので、嫁としての嫁ぎ先や入り婿としての入り先に困ることはないそうだ。当然俺自身の結婚相手にも困ることはない、らしい。


つまるところ、家計が苦しい筈の両親が俺以外の子供を産んだのは、将来的に切実にならざるを得ない理由があったからだ。


だが、俺としては妹を売り払うような真似をするつもりはない。もちろん、家族そろってヒモとして縋り付くつもりもない。


いや、現在進行形で家族から支援を受けて生活をしている両親を馬鹿にするつもりはないのだけれど。


そうしなくてはならない状況だということも理解しているし、家の存続と俺の将来を両立させるための苦肉の策だということも理解している。


だが、それとこれとは話は別。


家柄もあるので完全に自由な恋愛をさせることは難しいかもしれないが、それでも妹には自由に生きて欲しい。なにより神様の加護を得て生まれた俺が妹のヒモだなんて情けないではないか。


『つっても、神自体がヒモみたいなもんじゃけどな』


信者から捧げられる願いやら供物を受け取って懐を満たしている本神が言うと説得力もひとしおであるが、それはそれ。


『捧げ……る』


蝕はガッツで切り抜けましょう。


とにかく大事なのは俺の心。俺が納得できるか否かだ。


そして俺が妹を犠牲にすることに納得できないことはすでに述べたとおり。


しかしながら、どれだけ理想を説いたところで現実が伴わなければ意味はない。


理想では腹は膨れないのだから。


ではどうするか?


俺が稼げばいい。


「つーわけで、行ってきます」


「気を付けていくんだよ」


「うぃっす」


ガワの年齢は14歳の少年だが、中身はウン十歳の大人である。


当然その辺の子供とは規格が違う。


両親とて好きで娘を売り払いたいわけではないので、俺に金が作れる手段があると分かっているのであればそれを止めるつもりはないようだ。


尤も、両親は俺の中身というか、俺に憑いている神様を信頼しているようだが、それはそれで一向にかまわない。


大事なのは、保護者である両親に俺が稼ぎに出ることを認めてもらうことなのだから。


「さぁ、行こうか」


『うむ』


俺が稼ぐという方針に神様も納得してくれている以上、怖いものはない。


行こうじゃないか。稼ぎとレベルアップを兼ねた異界探索へと。


投稿初日&四千文字以下なのにポイント400超えとジャンル別ローファン9位、だと? ……正気か?(建前)


ブックマーク&ポイント評価ありがとうございます!(本音)    


閲覧ありがとうございます。



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