2章1話。プロローグ
沢山ポイントを貰えたおかげで筆が乗ったので2章を投稿します
国立東京退魔育英高等学校
国分寺市は国分寺公園跡地に造られた学校で、敷地面積は凡そ15ヘクタール。
東京ドーム換算で約3.2個分の広さである。
『アレってドームだけなんじゃろか。それともドーム街全体なんじゃろか?』
埼玉県民にはよくわからないですよね。
だから別の例があります。
『ほほう?』
なんと浦安にあるネズミの王国が約51ヘクタールで東京ドーム11個分です。
なので、3.6倍すればあそこと同じくらいだと言えば地方の出身者にもわかりやすいかと。
『おぉ! ネズミランドは敷地面積だから埼玉県民にもわかりやすいの!』
そうだろうか?
3.2倍とか3.6倍とか言われてもわかり辛くない?
『こやつ、振り逃げしおった……』
記録上は三振がつくのでアウトと思われがちだが、実質的にセーフなので問題はないのである。
暴投扱いの場合はノーヒットノーランにはなるんじゃろか?
と野球のルールに思いを馳せる神様。
振り逃げが成功した場合は、完全試合にはならないが得点さえ許さなければノーヒットノーランにはなるので安心してほしい。
『パーフェクトクローザーに妾はなる!』
それはダメじゃー。
人体の限界と野球のルールを投げ捨てた幻のゲームはこの世界にないので色々と諦めてもらうとして、話の本題はこの学校のことである。
東京ドーム3個分の敷地面積と言われれば一学年に30人くらいしかいない学校の規模にしては大きいと思うかもしれないが、ここには魔術的な技術の研究や魔石を使った技術の検証などを行うための施設が併設されているし、なにより学校が管理している異界が存在するため、それほど余裕があるわけではないそうな。
『近隣住民の避難とかを考えたらもう少し空間があった方が良いかもしれんな』
基本的に異界は閉じた空間だし、そもそも異界の中にいる妖魔は空気中にある魔力的な力がないと生存できないため、小説よろしく【異界から大量の妖魔が溢れ出す!】なんてことはそうそうない。そうそうないが、皆無ではないので警戒が不要というわけでもない。
『自力で魔力的な力を排出できる妖魔であればいくらでも出てこれるってことじゃからな』
そういうことなので、万が一に備えて空間を確保するのは悪いことではないのだ。
今のところ俺には関係ないが。
『今更深度2か3の異界から妖魔が出てきたところでのぉ』
レベル差があるのでいつでも潰せるし、研究所でやっている【魔石】や素材の研究にしてもあまり興味が湧かない今日この頃。
『今のお主には深度3の素材で造られた武具なぞ必要ないからの。あと、前に言っておったように、連中の技術レベルを上げるのはまだ早いってのもあるか?』
そうなのだ。妹用に防具くらいは揃えておきたいところではあるが……それなら学校なんかに頼らず、最初から中津原家に深度4や深度5の異界から取れる素材を渡してオーダーメイドした方が早いからな。
『国が信用できんからの』
ほんとそれ。
連中には“お国”のためにって大義名分があるのだろうが、そういうことを口にしている輩にとっての“お国”とは、自分やその周辺で利権を貪る仲間だけってパターンが多すぎる。
まして今の彼らは退魔士の首に鈴をつけようと必死になっている最中。
いかに適当に生きている俺でも、そんな連中を強化して自らの首を絞めるような真似をするつもりはないのである。
この学校に入学することにしたのも、あくまで無料で高卒資格を取得するためであり、それ以外の理由はないし。
『面白そうな技術とかもなさそうじゃしな』
そうですね。
ここで神様がいう技術とは、科学者が研究しているそれではなく、退魔士が習得しているものを指す。
ちなみにこの学校、退魔士の養成機関を謳ってはいるものの、専門的な教育はあまり行われていない。
具体的には、特殊な素材で造った武器を使った素振りや、結界のような効果のある御守りの作成方法の伝授など、基礎的な魔力の使い方を教える程度のことしかしないらしい。
理由は技術の秘匿と保全だそうな。
『そらそうよ。基礎知識とかならまだしも、技術なんてのは門外不出が基本じゃからな』
教える方だって技術をバラ撒くような真似はしない。当たり前の話だ。
他にも教員の数と質の問題もある。
『神社の息子に密教の業を教えろと言われてもな。教える方も教わる方も困るじゃろ』
その通りとしか言いようがない。
だが、そうなるとこの学校は専門学校でありながら専門技術を学べない学校ということになる。
そんな学校になんの意味があるのか。
もしくは、そんな学校に入学する生徒にどんな目的があるのか。
学校の存在意義については一言で言えば【退魔士】を集めること。これに尽きる。
『この学校は国立じゃて。国が求めておるのは【退魔士】であって、貧困世帯の子供ではないからの』
そう。この学校に入学できるのはあくまで【退魔士】であって、宗教関係者の子供が無条件で入学できるわけではないのだ。
故に【退魔士】としての力がある人間を集めることができている時点で、この学校の存在意義は果たされていると言ってもいいだろう。
では【退魔士】としての力をもつ子供がなぜ生徒としてこの学校に入学するのかというと、これまた単純な話で、どれだけ力のある人間であろうとも、この学校を卒業しないと【退魔士の資格】が得られないからだ。
ここで、俺や環は【退魔士】ではないのか? と思う人もいるかもしれない。
その答えは半分正しく、半分間違っている。
確かに俺や環はすでに実績を上げている【退魔士】だ。
だが、この場合の【退魔士】とはあくまで協会からの依頼を受けて物品を納品している業者の呼称でしかない。
『言ってしまえば「職業:冒険者」みたいなもんじゃな』
そんな感じです。
これに対して【退魔士の資格】とは、言わば国家公認の退魔士であることを証明する資格である。
この資格を有することで、国や地方自治体が行う入札に参加することができるようになったり、協会を通さずに依頼を受けることがでるようになるというメリットが存在する。
これらの事情からこの資格は名門であれば絶対に欠かせないものなので、早苗さんのような金や技術に困っていない人間であっても【この学校を卒業した】という経歴を手に入れるためだけに、わざわざこの学校に通わされることになるのである。
また、この資格に付随している社会的な信用が目当てという層もいる。これは新興の宗教団体などの場合が特に顕著なのだが、この資格を持っている人間がいるか否かで組織としての信用が得られるかどうかが左右される(この資格を持っている人間がいない宗教組織は似非認定されてしまう)ため、彼らにとってこの資格はなんとしても欲しい資格となっているので、今のところこの学校へ入学したいという人間は後を絶たない状況となっている。
『国の思惑通りじゃな』
そうともいう。
兎にも角にも、俺はあくまで自分の将来の為にこの学校に来たのであって、他の誰にも迷惑をかけるつもりはない。植物のように3年間を平穏に暮らして卒業できればそれでいい。なんなら早苗さんや環とはずっと別行動でも良いと思っているくらいだ。
『NTR計画はどこ……こ↑こ↓?』
そんな計画は最初からありません。
「聞いているのかなッ!?」
だからナニカ勘違いをしている先輩っぽい人。
頼むから俺に関わろうとしないでください。
絶対面倒ごとにしかならないから勘弁してください。
『叫び声を上げるな! 陰茎が苛立つ!』
股間が気になってハイジャックに失敗したかぼちゃマスクは退場してどうぞ。
閲覧ありがとうございました。