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27話。学校についてのあれこれ

「うーむ。困った」


いや、マジで困った。


『何がじゃ?』


なんだかんだと聞かれたら、答えてあげるが世の情け。


つーか元々は前回神様から頂いたフラグ宣言が原因だからな。

神様には聞く権利がある。というか聞いてもらいます。


「学校でどう過ごすかを決めかねていまして」


『ほむ?』


俺が通うことになる学校は退魔士用の学校である。

全寮制だとか学費が不要などの細かいことは環との会話で触れたとおり。


ちなみに退魔士だけが通える退魔士専用の学校は、日本に2校存在する。

場所は東京と京都。


これを“2つしかない”と取るか“2つもある”と取るかは人それぞれだろう。


俺は“2つもある”派である。


だってそうだろう? 向こうは神道系や仏教系の学校ではなく【退魔士】専用の学校だぞ。


特殊な才能の持ち主かつ同い年の子供がどれだけいるというのか。


一学年に10人、いや、三学年で10人しかいなくても驚かんぞ。


そう思っていたのだが、環曰く一学年で30人くらいはいるらしい。


日本は広かった。


『そりゃそうじゃろ。お主の周囲だけでもお主と環と早苗がおるんじゃぞ? 東日本全域なら50人くらいおってもおかしくないわな』


本当にその通り。


ついでに言えば、退魔士は死亡率が高いので各所でできるだけ増やそうとしているんだとか。


なんでも子供に退魔士が生まれた場合、補助金を出す組織もあるらしい。


ウチ? ウチはそういうコミュニティーに入ってないから。

もちろん鷹白家も入っていない。


実のところ国会でも補助金制度の導入は何度か取りざたされているらしいが、今もって国を挙げてやっていないのは一般の人と退魔士の間に溝を作らないためらしい。


『利権の調整に時間がかかっとるだけじゃろ』


もしくは政治家連中こそが退魔士を恐れているか、ですね。


『あぁ、そういう意味では連中も【一般人】じゃものな。自分を特別視できないのも怖ければ、自分の影響力が及ばぬ相手が怖いわけか』


でしょうね。


彼らは退魔士を恐れているが故に退魔士の数を抑制したい。しかし【魔石】を含む異界由来の産物を軍事や経済に流用するためには退魔士を増やす必要がある。でも退魔士が増えたら怖い。


その堂々巡りってわけだ。


『ほんなら国が本格的な支援を行うのは、退魔士を討伐できるだけの装備が十分に整ってから、かの?』


だと思いますよ。その方が世論を説得しやすいでしょうし。

なんなら他国が色々やってくれるのを待っているかもしれませんね。


『その間に貴重な退魔士が余所に流れて行くわけじゃな』


余所っつってもなぁ。他国ならまだしも、ほとんどは冥土に逝きそうで怖い。


『政治家や役人にしてみたらそっちの方が良さそうじゃな。なにせ他国に行けば血統や秘伝が流出するが、冥土に逝く分には個人の問題で終わるわけじゃし』


本当にそんな感じで考えていそうなのが怖い。


『連中、未来の創り手としては三流以下じゃが、利権漁りと保身にかけてだけは一流じゃからのぉ』


しぶとい。(確信)


政治と金の問題で俺たちが補助金の恩恵に預かれないことについては今後の課題にするとして。問題は学校に通った後のことである。


『そういえば過ごし方がどうこう言っておったな』


ええ。喫緊の問題としては、環と一緒に異界に潜るのは良いとしても深度3の異界に潜るかどうかって話ですね。


『潜ればいいじゃろ。隠す意味もなくなったんじゃし』


隠す意味というかバレていたというか。


まぁいいや。とりあえず俺が深度3に潜るかどうかを悩んでいる理由ですけど。


『うむ』


まず学校が用意した仕事に従事して深度3の異界の素材を集めるということは、国に深度3相当の素材を渡すということでしょう?


『そうじゃな。あ、値崩れの心配か?』


いえ、深度2の【魔石】ですら不足している今、深度3の異界から取れる素材なんて何処でも引っ張りだこでしょうから、俺と環と早苗さんで手に入れることができる程度の量で値崩れが発生する心配はありません。


むしろもっと回収させるために単価を上げるくらいのことはするだろうと思っています。


『単価が上がるなら問題などあるまい?』


今回に関してだけは、問題は金ではないのですよ。


『金じゃない、じゃと?』


そうなんです。俺らが採取を頑張れば頑張るほど、国が深度3相当に潜れる退魔士に対抗できる武装を手に入れることができるわけですよ。


この前ウチに来た教会の連中みたいに。


『それが連中の目的の一つじゃからな』


退魔士への対抗手段が増える。つまり、千秋が危ないってことじゃないですか。


『ん? まぁ、そうなる……か?』


そうなるのだ。


今は深度3の素材が貴重だから国としてもいざという時の為に蓄えているかもしれないが、俺が自重を忘れて毎日本気で集めたら結構な量になる。


その使い道は何処になるのかという話だ。


もちろん先ほど言ったように使い道はいくらでもある。だが、最優先で回されるのはエネルギー生産や各種産業関連の企業ではなく【対退魔士用兵器】の開発を行っている技研だろう。


俺が役人なら、退魔士たちに銃を突き付けてでも【魔石】を回収させる。

それに抗える力があればいい。だが千秋にはまだそれだけの力がない。


深度2程度ならパワレベすれば数日でいけるが、深度3相当になるとさすがに無理がある。


結果として俺が真面目に集めた素材が、千秋の危険に直結するわけだ。これは実によろしくない。


だから俺はハタチがどうこう言いながらその実、千秋が自衛できるレベルになるまで積極的に深度3の異界に潜る気はなかったのである。


心配し過ぎ? それ、この前襲撃してきた連中の装備を見ても言える?


アレは教会だったけど、次は国だぞ? 


なにせ俺は前回のアレのせいで教会や協会の上層部だけでなく、巻き添えで自分が呪われていたと知った政治家たちからも睨まれているからな。


尤も、それに感しては『アイツに関わるな』という抑止力にもなっているので、一概に損をしたと思っているわけではないが。


『お主の懸念は理解した。こちらの準備が整っておらん内に国に対して深度3の異界で取れる素材を回したくないのも道理よな。探索に関しては早苗や環に言えば納得してくれるじゃろう。じゃが……』


ええ。環や早苗さんなら理解してくれても、俺たちへの対抗策を欲している国(学校)が黙っているとは思えない。


異界に赴かなければ「何故深度3の異界に潜らないのか?」と訝しむだろう。 

採取する数を減らせば「何故その程度の数しか持ち帰ってこないのか?」と聞かれるだろう。

総じて「ナニカ疚しいことがあるのではないか?」と疑われることになる。


ただでさえ社会的に脆弱な俺が国家機関に目を付けられるのは問題しかない。


では「やっぱり学校に行かない」という選択肢はどうかというと、これも難しい。

だって両親が乗り気だから。


『自分らを護るために学校に行きません。なんて言われたら立場がないしのぉ』


ですよねぇ。


あと、入試に落ちたという言い訳も通用しない。

だって入学試験がないから。


『試験もなんにもない!』


学校はあるけど試験がないとはこれ如何に。


実際のところは【退魔士】としての実績がある場合は入学試験が免除されるというだけで、入学した後は普通に定期試験があるんですけどね。


『げげげぇ!?』


もちろん学校の存在理由が退魔士を確保することなので、赤点さえ取らなければ良いって感じであるが。


まぁ、卒業時に高卒資格を与える以上、最低限の教養がないと駄目なのだろう。

この辺はスポーツ特待課にスポーツ推薦で入ったと思えば不自然でもなんでもない。

前世を含めてスポーツ推薦なんて受けたことないけど。


問題はどう転んでも学校に通う必要があるということであり、学校で手を抜くにしてもそれ相応の理由が必要だということだ。


『お主が深度3に潜らんでも良い理由を探す方が難しいわな』


同期である環や早苗さんだって普通に潜っているからな。

今更二人に深度3の探索を遠慮してほしいとは言えない。

特に環には。


『アレはアレで生活が懸かっておるからの』


そうなんだよなぁ。


本来であれば彼女のように稼げるときに稼ぐのは悪いことではない。

むしろ稼ぐのを制限している俺の方が異端だろう。


それはわかっているのだが、家族の安全に直結するとなると悩むわけで。


こんなことなら学校に通うにしても普通の公立高校にしておくべきだったぜ。


まさかこの俺が深度3の異界に潜れることが周知されているとはな。

気付かなかった。この俺の目を以てしてもっ!


『さすがに二年も気付かんのはどうかと思うがの』


誰も指摘してくれなかったんだから仕方ないと思います。


あと、絶対に出てくるであろう馬鹿への対処法。


『馬鹿? あぁ「どこの馬の骨とも知れない男が早苗さんに近づくな!」的なアレか?』


そう、それ。そういうやつに限って名門の人間でしょ?


『そりゃ、“自分は早苗に近づく奴を制限できる権利がある”と自認することができるとすればそれなりの名門じゃろうな』


殺したら面倒になるじゃないですか。


『呪いはどうじゃ?』


俺が干眼の呪い以外にも強力な呪いが使えるとわかったらどうなると思います?


『これ以上成長する前に何としても討伐しようとするじゃろうな。もしくは研究材料として確保された後にホルマリン漬け、かの?』


ですよねー。


なので喧嘩を売られても穏便に済ませないと駄目なんですけど、穏便に済ませることってできると思います?


『無理じゃろ。獅子にとっての甘噛みはネズミからすれば致命傷ぞ』


ですよねー。


そんな感じで諸々考えていると不安になるわけですよ。


『ほーん。獅子には獅子の不安があるわけじゃな。しかし……』


なんです?


『フラグが建つ前に破壊するのはちょっとどうかと思わんか? 見ている方の楽しみとか考えたことある?』


面倒ごとは無い方が良い。当たり前の話だよなぁ?

タイトルにも日常系って書いてるからね。

フラグなんていらないよね。(二級フラグ建築士)


閲覧ありがとうございました。


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