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今生では普通のJKとして生きます!  作者: ミント


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9/15

マキはそれを信じてしまった

「こないだの日曜日に、二宮と占いをしに行ったっていうのは本当か?」


 昼休み。約束通り斉木先生のもとを訪れると、いきなりそう言われた。


 二宮、といえばマキのことだ。小テストのことは口実で他に何か話があるのかも、と考えてはいたけれど、あまりに意外な話題が出て思わず答えにまごついてしまう。

「最近、二宮の怪我が多いだろう? だから何か悩み事とか体調が悪いとかあるのか聞いたら、占いのせいだって言うんだ」

「じゃあ、マキの最近の不運は全部占いのせいだった、って言うんですか?」

 問い返す私に、斉木先生はゆっくりと話し始める。


「二宮は占い師に『あなたの友人に危機が迫っているから、あなたが助けてあげなさい』って言われたらしい。それで何をしろって言うと、森野のマイナスエネルギーを中和するように自分がプラスのエネルギーを発するようにしろって言われたらしいんだ」

「でも、それでなんでマキが怪我を?」

 混乱したまま話の見えてこない私に、斉木先生は詳しく説明をしてくれる。


「問題は、そのプラスエネルギーを発揮する方法さ。『いつもニコニコ笑顔を意識する』『家族や友人を心配させないよう、前向きな発言を心がける』はまだいい。『俯いたり後ろを見たりすることはそれだけで下向き、後ろ向きに繋がり運気が下がるからできるだけやらないように』『月は女性的な力を放っているから、そのエネルギーを得るためできるだけ月の光を浴びるように』は、どちらもそれらしい言葉で包んであるけど要は「足下や背後に注意するな」「夜遅くに出歩け」だ。そんなことをしていたら、危険な目に遭う回数は増えるに決まっているだろう?」

 斉木先生の言葉を聞いて、私は思い返す。


 確かに最初、社会科目の移動教室中に階段から落ちたマキはなぜか前ばかりを向いていた。夜に一人でコンビニに行くのも、この物騒な時代を考えれば不自然な話。誰もが無意識にしている注意を一切やめてしまったら、怪我が続くのは当然だろう。そう納得すると同時に、今度は怒りが湧いてくる。


 マキが占ってもらったのは私が星野ミコトに占ってもらった直後だ。同年代の女子が私のすぐ後に来れば、友人同士だろうということは簡単に予想がつく。「さっきの子は友達?」なんて軽い聞き方をすれば、何も知らないマキはあっさり認めるだろう。星野ミコトは、政彦はそれを利用して、マキを危険に誘導したのだ。

「森野、『バーナム効果』って知ってるか?」


 政彦への怒りが湧いてくる私に、斉木先生が唐突にそう尋ねる。いきなり知らない単語を聞かされた私は言いよどむが、斉木先生は丁寧に説明してくれる。


「冷静に考えれば誰でも当てはまるような曖昧なことでも、『これはあなたに向けたメッセージです』と言われると『すごい! 当たってる!』って感じちまうことさ。例えば『あなたの家族に癌で亡くなった方がいますね』って言うだろ? でも冷静になって考えてみれば長い間、日本人の死亡原因第一位は癌で、四人に一人は癌になるって言われているんだ。そりゃ親戚中探せば、癌で死んだ奴が一人ぐらい見つかるに決まってる。『周りに心配をかけないように強がってしまいます』とか『意外と繊細で傷つきやすい性格です』だって、どんな人間でも多かれ少なかれそういう一面があるに決まってる。占いの多くは大概これに当てはまってるんだ」


 血液型占いとか星座占いとかだって、だいたいそうだろう? そう話す斉木先生の言葉に、納得する。


 そういえばお母さんが昔、星座占いで「親しみやすくて気取らない」という結果を受けて大はしゃぎしていたけれど実はそれが全然違う星座の結果でお父さんに笑われたことがあったっけ。結局、どちらの結果もお母さんにぴったりだってお父さんが笑ってた記憶があるけれど、考えてみれば誰でも「親しみやすくて気取らない」一面があればその逆、例えば「初対面の人と馴染みにくい」みたいな一面もあるはずだ。そもそも、占いは細かいところまでぴったり当てるのは難しいからどうしても曖昧な表現になる。けれど裏を返せば、ぼんやりした言い方にしておけばとりあえず「当たった」と言えるということだ。


「二宮があんまり占いのことを気にするから、その占い師が他に何を言ったのか聞いてみたんだ。そしたら最初に森野が友達かどうか聞かれて、『やはりそうですね。あなたはときどき自分と彼女を比べてしまい、自己嫌悪に陥ることがあるでしょう?』と言われたらしい。他にも『実は誰にも言えない容姿のコンプレックスがある』とか『将来の夢や希望が漠然としていて、不安を感じる』とか自分のことをぴたりぴたりと言い当てられて、この占い師は本物だと信じたそうなんだ。だけど、冷静に考えればそんなのは高校生なら誰でも当たり前に悩むことばかりだ。曲がりも何も高校教師の私が言うんだから間違いない。つまりその占い師はそれらしいことを適当に言っているだけだったってことだ」


 自分への不安と友人へのジェラシー。容姿の悩みに進路の不安。それは私にも当てはまることだ。いや、クラスメートや他の女子も、みんな当てはまることだろう。だけどそれを「占い師」という肩書きのある人間から「あなたのことだ」と言われたから、マキはそれを信じてしまったのだ。

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