連絡くれて嬉しいよ
いや、ただ言われただけならマキもあっさり信じなかったかもしれない。
にも関わらずマキが星野ミコトの言葉を信じてしまい、そのアドバイスを律儀に実行する気になってしまったのは「友人に危機が迫っている」と言われたからだ。私だって大切な人に危機が迫っていると言われ、その直後にマキが階段を落ちるなんて出来事があったから星野ミコトの言葉に信憑性を持ってしまった。つまり私とマキは最初から、お互いを人質にされあの占い師に操られていたのだ。
「とりあえず二宮には占いを信じるなって言っておいたよ。それよりお前が怪我ばっかりして森野を心配させる方がよっぽど悪影響だ、ってな。そしたら今度は『森野も占い師とあった後の顔色が悪かったから何か酷いことを言われたのかもしれない』って言ってさ。だから、こうやって気になって聞いてみたわけだよ。」
愕然とする私に、斉木先生は気遣わしげに尋ねる。先生はどうやら私のことを心配してくれているらしい。マキも自分が酷い目に遭ったにもかかわらず、真っ先に私のことを案じてくれた。それは素直にありがたいことなのだけれど、私の頭の中には焦りと疑問がどんどん膨らんでいた。
政彦はどうしてそんなことをしたのか? マキを危険な目に遭わせて、私に会う。だけど私の知る政彦は良くも悪くも、そんな手の込んだことができる人間ではなかった。政彦から占い師に転生して占いのことを学ぶうちに、悪質な占い師の手口を学んだのだろうか。だけど、そこまでして私に会いたかったのだろうか? それはただの愛情?
斉木先生が見つめる前で私は口を閉じたまま何も言えなかった。
◇
「連絡くれて嬉しいよ」
左手の腕時計から目を離し、にっこりと微笑みかける星野ミコト。王子様のような輝かしい表情を、私は正面から真っ直ぐに見据える。
絶対に連絡しない、と考えていたくせに捨てることのできなかった星野ミコトの連絡先。それにコールしてみると、あっさり繋がった。そのまま話はとんとん拍子に進み、学校が終わったらすぐ会えることになった。
私が指定したの待ち合わせ場所は先日、マキと一緒にクレープを食べたフードコートだ。店員さんや他の女性客がこちらを羨望の眼差しで見つめるのは面倒だが、同時に周りに誰かいるという状況は私を安心させてくれる。大丈夫、少なくともここにいる人間全員が私を敵視するとは考えられない。仮にそうなったとしても、鈴子の時のように直接的な暴力は振るわれないはずだ。自分を落ち着けるように私は呼吸を整える。
「とりあえず甘い物でも食べる? 話したいことはそれを食べながら話してくれればいいからさ。鈴子は甘い物、好きだったでしょ?」
親しげに、と言うより馴れ馴れしく話す星野ミコト。その姿を前にして、私は決意する。
「あなた、本当は政彦の生まれ変わりなんかじゃないでしょう」
きっぱりと言い放つと、星野ミコトは手を止めて私をまじまじと見つめた。その目の奥で何を考えているのかはまだわからない。けれど、私は怯むことなくその目を睨み返した。




