柴咲さんに気持ちを確認してみる⑥
「……私にそんなこと言って、静香ちゃんのことはどう思ってるんですか?」
「無論、素敵な女性だと思っている」
能力者も魅力的だが、くノ一も同じくらい魅力的な存在である。
「だったら、静香ちゃんの気持ちに応えたらいいじゃないですか」
それは、俺に主になれということだろうか?
いや、柴咲さんは白鳥さんの裏の職業のことは知らないハズだし、意図は別だろう。
「それは、白鳥さんが俺に好意を抱いているということか?」
「そうですよ。いくらなんでも、気付いていますよね?」
「ああ。確かに、彼女に好意を向けられている自覚はある。ただ、柴咲さんは勘違いをしている」
「勘違い?」
白鳥さんは、俺に主様になって欲しいだけなんだ――とは言えない。
そんなことを言っても、何言ってんだコイツと思われるだけだし、詳しく説明すると白鳥さんが忍者の末裔だと説明しなくてはならなくなる。
そもそも信じてもらえないだろうから、俺が変人扱いされるだけだ。
ここは上手く誤魔化すしかない。
「実は……、白鳥さんも臭いフェチなんだ」
「は? いや、ちょっと待ってください「も」って何ですか! 私は臭いフェチじゃありませんよ!」
ああ、柴咲さんはスーパー臭いフェチだもんな。
「まあそれは置いておくとして、これで誤解が解けただろう」
「置いておきたくないんですが……。何ですか、じゃあ静香ちゃんは、アナタの臭いが好きだから好意を寄せてると?」
「そうだ」
「そんなワケないじゃないですか! いくら臭いが好きだからって、それで尽くしたいなんて言うワケありません!」
「そうでもない。彼女は俺に尽くすことで、おこぼれ頂戴的に俺の臭いを楽しもうとしてる」
自分で言ってて何を言ってるかさっぱりわからないが、このまま強引に押し通そう。
「~~~~っ! それを静香ちゃんの口から直接聞いたんですか!?」
「それは……」
もう既に白鳥さんのイメージを十分にぶち壊しておきながら、彼女が自分から臭いフェチだと告白したとは言い辛い。
現時点では俺が勝手に言っているだけだが、白鳥さんまで嘘を吐いたことにするのは抵抗がある。
「言い淀むってことは、アナタの勝手な想像ってことですよね」
「…………」
何も言い返せない。
どうしたものか……
ぷぅ♪
俺がどう返すか考えあぐねていると、沈黙を破るように可愛い音が鳴り響く。
反射的に柴咲さんを見るが、彼女はブンブンと首を横に振る。
じゃあ、一体誰が……
「……もしかして、静香ちゃん?」