柴咲さんに気持ちを確認してみる②
柴咲さんは俺が好きなのか、それとも、俺のニオイが好きなのか。
その真意を探ろうと思ったが、残念ながら柴咲さんは今日お休みだった。
あんな恰好のまま寝たから風邪をひいたのではと白鳥さんは言っていたが、そうだとしたら責任の一端は俺にもある気がする。
症状についても心配なため、仕事帰りに見舞いに行くことにした。
「案内については任せてください」
柴咲さんの家については白鳥さんが把握していたため、案内してもらうことになった。
一緒に会社を出るとまた色々と勘繰られるため、少し時間をずらして駅で合流する。
「私はマンションの前まで案内するので、詩緒ちゃんの部屋には主様だけで行ってください」
「いや、流石にそれは不味いだろう。いくら同僚とはいえ、一人暮らしの女性の家に男が押し掛けるのは非常識だ」
しかも相手は風邪で弱っているハズだから、モラル以前にセキュリティ的にもよろしくない。
「主様の口から非常識と聞くと違和感がありますが、確かにその通りですね」
それは、俺が非常識ということだろうか……
「わかりました。では、私は途中で一時席を外しますので、その後は如何様にもお楽しみいただければと」
白鳥さんは俺に一体何をさせたいのだろうか……
柴咲さんの部屋の前まで辿り着き、白鳥さんが呼び鈴を押す。
『……はい』
「白鳥です。お見舞いに来ました」
『静香ちゃん!? わざわざ来てくれたの!? ありがとう! ちょっと待っててね』
少しの間があって、扉が開かれる。
「いらっしゃい、静香ちゃ……あれ?」
柴咲さんの視線が、白鳥さんの後ろに立っていた俺に合わさる。
一瞬その表情に喜色が浮かぶが、次の瞬間、自分の恰好を見て固まる。
彼女はまだ、俺のYシャツを着たままだった。
「……流石にブカブカだな」
Yシャツのサイズは標準だが、小柄な柴咲さんが着るとブカブカで、袖が余っている。
それが柴咲さんの可愛さを一層強調しており、不覚にも少しドキリとしてしまった。
「な、な、な、なんでいるんですかーーっ!」
柴咲さんはそう叫びながら、同時に正拳突きを水月に叩き込んできた。
無防備にそれを受けた俺はたちまち呼吸困難に陥り、膝から崩れ落ちる。
「無念……」
「あ、主様!?」
前のめりに倒れそうになった俺を白鳥さんがギリギリで支える。
「詩緒ちゃん! ダメですよ! 最近は暴力ヒロイン流行らないんですから!」
「ふぇ!? だ、だってぇ!」
「だってじゃありません!」
白鳥さんの説教は暫し続いた。