誰も彼もが死んでいる
「誰も彼もが死んでいる」と言われ振り向くと「そう思わないか権兵衛」ともう一度聞かれる。
私は、何も答えられなかった。答えたくとも言葉に出来なかったのだ。一言――「そんなことはありませんよ」と言うだけのことが、これほどまでに重いのかと汗が流れた。
打ち上げられた魚――いや魚ならばいとも簡単に言っただろう微笑んで。私は、魚ではないことを今日この日に理解したのだった。
飼われた鯉――それほど綺麗な人間ではないが、人間にいいように刷り込められているのだ。手をかざされて喘ぐ鯉。悪戯にそうするように、そうしなければならないように、気付けば長い年を鯉として在った。
それを憐れに思ったのだろう。今一度、聞かれた。
ぱくぱく。
私の口が鳴る。
ぱくぱく。
果たして、私は息をしているのだろうか――ぱくぱく。ぱくぱく。
そうして、寂しそうな目を向けられて私は沈んでいった。